研究実績の概要 |
【研究の目的】本研究は、急性心筋梗塞病態(心筋虚血再灌流傷害および梗塞後心臓組織修復)において、単球・マクロファージを介した炎症およびその収束・修復の役割を明らかにし、この過程を制御するため、核受容体PPARγを標的としたナノ医薬を開発することを目的とした。 【研究実績の概要】(1)マウス心筋虚血再灌流モデルにおいて、虚血再灌流心に組織障傷害性M1マクロファージによる炎症と組織修復性M2マクロファージの集簇が段階的に起こることを示した。(2)PPARγナノ医薬としてピオグリタゾン封入ナノ粒子を作成し、急性心筋梗塞後の投与によりPPARγナノ医薬が急性炎症を抑制するとともに、心臓組織におけるマクロファージM1/M2分化を組織修復性M2優位に制御すること、それとともに心筋梗塞後リモデリングを抑制することを示した。(3)マウス心筋梗塞モデルにおいて、PPARγナノ医薬による心筋梗塞後の治療介入は心破裂の抑制および生命予後改善効果を示した。研究成果をCardiovascular Research誌(Tokutome M, Matoba T, et al. Cardiovasc Res. 2019;115:419-431. DOI: 10.1093/cvr/cvy200)に報告した。この研究により、ナノ医薬のプラットフォームの有用性を示すとともに、急性心筋梗塞病態における急性炎症と組織修復の制御による新しい疾病治療コンセプトを示すことができた。 【今後の研究の展開】本研究から得られた知見をもとに、心筋梗塞における炎症の機序における、PPARγを含めた核受容体と脂質代謝の関与について研究を展開させる計画である。
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