研究課題/領域番号 |
17K09593
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
宮田 昌明 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (00347113)
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研究分担者 |
池田 義之 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 講師 (00573023)
赤崎 雄一 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 助教 (00631920)
大石 充 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (50335345)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 大動脈瘤 / マクロファージ |
研究実績の概要 |
腹部大動脈瘤 (AAA) は慢性炎症性変性大動脈疾患であり、特に高齢者に発症する。nucleotide-binding oligomerization domain-like receptor family protein 3 (NLRP3) インフラソームは多蛋白質複合体であり、インターロイキン (IL) ‐1βおよびIL‐18を処理し、カスパーゼ1を活性化することにより炎症反応を惹起する。我々の治験も含め、以下のような項目に分けて、NLRP3インフラソームがAAAに重要な役割を担っていることを総説としてまとめた。先ず初めに、NLRP 3インフラソーム活性化の原理と小分子NLRP 3 インフラソーム阻害剤の機能的クラスについて概説した。NLRP 3インフラソームの炎症促進物質であるIL-1βとIL-18、およびNLRP 3インフラソームの構成成分であるカスパーゼ1、apoptosis-associated speck-like protein containing a caspase recruitment domain (ASC)およびNLRP3の臨床および実験AAAにおけるデータをまとめた。最後に、実験AAAに対するNLRP3インフラソームの個々の作用物質およびNLRP3インフラソームの構成成分の遺伝的欠損または薬理学的阻害の作用をまとめた。蓄積しつつある臨床的および実験的結果から、NLRP3インフラソームが臨床的AAA管理のための薬理学的戦略を開発するうえで有望な治療標的である可能性が示唆された。以上のことをJ Atheroscler Thrombに論文掲載した。 以上のように、スタンフォード大学のDalman教授とXu博士との共同基礎研究は順調に進行している
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者が2018年4月に鹿児島大学から鹿児島市立病院に異動になり、診療業務に時間を割かれ、本研究課題の遂行に遅延が出ていたが、2021年4月に鹿児島大学に戻り、研究を再開している。但し、新型コロナウイルスで鹿児島大学病院における臨床研究に支障を来たしたため、研究期間の延長を依頼した。上記概要に示したようにスタンフォード大学との共同研究により研究は進んでおり、論文も発表されている。 動物実験による基礎研究においては、CD-11b-diphtheria toxin receptor (CD11b-DTR)トランスジェニックマウスにdiphtheria toxin(DT)を投与する実験系で大動脈瘤モデルマウスの発症、進展、退縮における全マクロファージの役割に関する実験を行い、成果を得つつある。 大動脈瘤手術患者における活性化マクロファージの役割の検討に関しては、FRβモノクローナル抗体を作成し、大動脈瘤患者の大動脈瘤における免疫化学組織染色をおこない、さらに、血中可溶性FRβ濃度を測定している。 また、Webによる鹿児島県大動脈瘤患者レジストリーに関しては、調査項目など確定させ、Webによるレジストリーシステムを構築している。
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今後の研究の推進方策 |
動物実験による基礎研究においては、CD-11b-diphtheria toxin receptor (CD11b-DTR)トランスジェニックマウスにdiphtheria toxin(DT)を投与する実験系で大動脈瘤モデルマウスの発症、進展、退縮における全マクロファージの役割に関する実験を行い、大動脈瘤の組織片をelastaseとcollagenaseで処理し血球を抽出しフローサイトメトリーでCD45を発現する白血球成分と活性化マクロファージのマーカーである葉酸レセプターβ(FRβ)を発現する活性化マクロファージ成分の比率を解析する。また、動脈硬化のモデルマウスであるapoE欠損マウスとCD11b-DTRトランスジェニックマウスを交配して、動脈硬化における全マクロファージ欠失の関与を調べる。さらに、この交配したマウスを用い、FRβ抗体に緑膿菌毒素を結合させたリコンビナントイムノトキシン(FRβイムノトキシン)を投与して、大動脈瘤の発生と生存率を観察しており、全マクロファージ欠失時の活性化マクロファージの関与を検討している。これらは、スタンフォード大学のDalman教授とXu博士と共同して基礎研究を遂行する。 大動脈瘤手術患者における活性化マクロファージの役割の検討に関しては、ELISAシステムを構築して、血中可溶性FRβ濃度を測定し、さらに、大動脈瘤手術患者の摘出大動脈において、このFRβモノクロールにより免疫組織染色を行い、FRβを発現する活性化マクロファージの局在の検討をさらに進める予定である。 また、Webによる鹿児島県大動脈瘤患者レジストリーに関しては、現在、18例の登録があるが、登録数が予測よりも少ないため、登録施設を増やして対応してさらに登録数を増やして、その患者群の血清可溶性FRβや炎症マーカーを測定し、大動脈瘤進展、あるいは心血管イベントや死亡との関連を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が2020年4月に鹿児島市立病院から鹿児島大学医学部保健学科に異動になり、講義とその準備のための教育業務に時間を割かれ、本研究課題の遂行に支障を来たした。さらに、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、臨床研究が非常に困難な状況にあり、臨床研究の遂行に遅延を生じた。 前年度未使用額を以下のように使用する計画である。 本研究には抗FRβモノクローナル抗体を使用するために、マウス抗FRβモノクローナル抗体作成に必要な培養関連試薬、蛋白精製に必要な試薬を購入する。さらに、抗FRβモノクローナル抗体に緑膿菌毒素を結合させたFRβイムノトキシンの作成に関する試薬、マウスや患者の大動脈瘤の組織を用いた免疫組織化学染色に用いる抗体や試薬、ならびに、フローサイトメトリー解析に必要な抗体や試薬を購入する。同時に測定する高感度CRP、IL-6などの測定に必要なキットや試薬も購入する。さらに、論文作成の費用も必要である。
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