研究実績の概要 |
1.血管内腔の再狭窄の動物モデルであるワイヤー血管傷害マウスモデル (大腿動脈ワイヤー傷害)を作成したところ、新生内膜形成とともに血管内皮でのFABP4の異所性発現を蛍光免疫組織法で確認した。また、炎症マーカー (Mcp1, Tnfa, IL1b, Il6等)の遺伝子発現の上昇を認めた。さらに、FABP4欠損マウスと野生型と大腿動脈ワイヤー傷害モデルを作成して比較したところ、FABP4欠損マウスでは炎症マーカーの発現誘導と新生内膜形成が少ないことが見出された。 2.マクロファージに飽和脂肪酸であるパルミチン酸の有無でリコンビナント FABP4を投与して、DNAマイクロアレイで解析したところ、パルミチン酸がある状態で炎症関連の遺伝子が誘導されることが認められ、細胞実験でmRNAの発現変化を確認した。 3.ヒト冠動脈由来血管内皮細胞(HCAEC)をVEGFやH2O2などで刺激するとFABP4が発現誘導され、培養液中への細胞破壊を伴わない放出(分泌)されることを確認した。誘導・分泌されたFABP4がオートクラインおよびパラクラインで作用を検討するために、HCAECやヒト冠動脈由来血管平滑筋細胞(HCASMC)にリコンビナントFABP4を投与したところ、炎症マーカーの上昇が認められ、HCAEC においてVEGFやインスリンによるeNOSのリン酸化の低下を認め、HCASMCでは増殖・遊走の亢進を認めた。 4.疫学調査 (端野・壮瞥町研究) で頸動脈エコーを測定したところ、無治療者における検討でFABP4濃度が頸動脈の内膜中膜肥厚の独立した説明変数であることと3年後の進展度に関連することを見出した。 5.ヒトの心臓手術時に採取した心外膜脂肪組織および剖検例での検討から、血管周囲脂肪組織における脂肪細胞とマクロファージと冠動脈プラーク内のマクロファージにFABP4の発現を確認した。
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