研究課題/領域番号 |
17K09595
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
李 ヨキン 日本大学, 医学部, 准教授 (30599048)
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研究分担者 |
高山 忠輝 日本大学, 医学部, 准教授 (10366601)
羽尾 裕之 日本大学, 医学部, 教授 (40393243)
松本 太郎 日本大学, 医学部, 教授 (50366580)
平山 篤志 日本大学, 医学部, 教授 (50459880)
春田 裕典 日本大学, 医学部, 助教 (90754002)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 大動物実験 / 動脈硬化 / ステント / 合併症 |
研究実績の概要 |
3ケ月齢のLDLR-/-ミニブタに4ヶ月、1日1キロの高脂肪食負荷で、冠動脈プラークモデルを作製することが出来た。4ヶ月間高脂肪食負荷後、ブタ冠動脈に冠動脈造影、血管内超音波(IVUS)で三枝冠動脈を観察し、不安定プラーク病変の特徴と部位を確認した。一頭のLDLR-/-ミニブタに薬剤溶出性ステント(DES)1本、生体吸収性スキャフォールド(BVS)1本を留置した。また、血栓閉塞を予防するために、留置三日前から実験終了まで抗血小板薬として、アスピリンとクロピドグレルを経口投与した。 ステント留置後の観察期間を3ヶ月、6ヶ月、また12ヶ月と設定し、冠動脈造影、OCT、IVUSと血管内視鏡を用いてステント内の血栓、血管内膜変化を定性、また定量的に観察した。実験終了後、ミニブタを安楽死させ、ステント留置部位の冠動脈と周りの組織を切り出し、樹脂包埋またパラフィンブロックを作成し、各種染色で組織病理学的に検討した。 3ヶ月間観察群では、DESとBVSともに留置直後ステントと血管壁密着し、内腔の表在性血栓を認めなかった。冠動脈造影では、ステント留置部位に軽度狭窄が認められた。IVUSで観察したところ、DESとBVSともにステントの内側に新生内膜が観察され、血栓を認めなかった。解剖したところ、心筋梗塞巣を認めなかった。冠動脈を摘出後、BVS留置部位の冠動脈をパラフィン切片、DES留置部位の冠動脈を樹脂包埋切片で染色し、ステント留置後の血管反応を観察した。DESとBVSともに平滑筋細胞が主成分とした新生内膜が形成された。新生内膜の中に炎症性細胞浸潤、ステントのストラット周囲のフィブリン蓄積、断片化された石灰化、泡沫状マクロファージなどが観察され、DESとBVS両群の間に新生内膜の成分が類似した。DESとBVS両群ともに、ステント内血栓を認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度に、8頭のLDLR-/-ミニブタを作製し、4ヶ月間の高脂肪食負荷により冠動脈プラークモデルを作製した。3ヶ月間観察群の3頭の内2頭実験終了した。12ヶ月間観察群は3頭にDESまたはBVSを留置して、その内1頭を2018年4月に解剖、2頭を9月に解剖予定である。6ヶ月間観察群の3頭の内2頭は平成30年5月にDESまたはBVS留置予定であり、1頭は6月にDESまたはBVS留置予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後、引き続きLDLR-/-ミニブタを作製し、4ヶ月間の高脂肪食負荷により冠動脈プラークモデルを作製後、DESまたはBVSを留置する。また、各血管内イメージングを用いて、経時的に冠動脈留置部位と周辺部位を観察する。 また、ステント留置後に異なる環境を作るため、通常食と高脂肪食の2群に分けて観察する。高脂肪食群はステント留置前後で継続して1.5%コレステロールと15%牛脂を含む高脂肪食を与える。通常食群はステント留置後より市販の普通餌を食べさせる。ステント留置後ミニブタを飼育しながら、経時的に採血し、冠動脈造影、IVUS、OCTと血管内視鏡を用いて留置部位のステントと血管の密着性、血管径、血管の拍動、内腔径、ステント内新規動脈硬化の量と成分、壁在血栓、血管内膜変化などを経時的に観察する。また内皮機能と血管運動機能を評価するため、ステント留置後経時的に、冠動脈からアセチルコリンを注射し、内皮依存性血管拡張反応を観察する。その後ニトログリセリンを注射し、内皮非依存性の血管拡張反応を観察する。観察期間終了後、ミニブタを安楽死させ、留置部位の冠動脈を切り出し、樹脂包埋またパラフィンブロックを作成し、免疫染色などを用いて病理学的検討を行う。観察項目は血管面積、内腔面積、血管内皮の損傷、新規動脈硬化の面積と成分(線維被膜、壊死性脂質コア、炎症細胞の浸潤、石灰化、粥腫内出血)、平滑筋細胞の遊走及び増殖、栄養血管、壁在血栓、DESまたはBVSのストラット周囲のフィブリン蓄積、BVSの場合は吸収サイトの組織変化(平滑筋細胞、プロテオグリカン、コラーゲンなど)、各種サイトカインの発現などである。また一部の冠動脈組織からタンパクとRNAを抽出し、内皮機能関連マーカー、平滑筋細胞関連マーカー、細胞増殖・遊走マーカー、血栓関連マーカーなどを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
H29年度では、高脂肪食の不足分の牛脂を購入した。また、LDLR-/-ミニブタにサンプルのDESとBVSを用いカテーテルを行い、観察を行った為、購入には至らなかった。 H30年度では、引き続きカテーテルを行い、ステント留置部位の病理学的な検討を行う予定。使用計画は、高脂肪食:50万円、カテーテル:10万円、国際学会参加:30万円、病理切片委託:20万円、病理染色用の試薬など消耗品:26万円、合計136万円を予定している。
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