研究課題/領域番号 |
17K09596
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛 |
研究代表者 |
難波 貴之 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 病院 内科, 講師 (90726499)
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研究分担者 |
眞崎 暢之 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 内科学, 講師 (00364795)
佐藤 泰司 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 薬理学, 准教授 (10505267)
足立 健 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 内科学, 教授 (50231931)
東谷 卓美 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 内科学, 助教 (60781515)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | インスリン抵抗性 / 肥満 / ERK2 / 血管内皮障害 / 一酸化窒素 / 活性酸素種 / 二型糖尿病 / 脂肪肝 |
研究実績の概要 |
Metabolic Syndrome/2型糖尿病(Mets/DM2)は肥満(内臓脂肪蓄積)、脂質・糖代謝異常の複合病であり、インスリン抵抗性と血管内皮障害を特徴とする。インスリンは全身に作用するため、個々の臓器でのインスリン抵抗性による変化と、代謝・血流を介する臓器連関が病態探求・治療標的分子解明に重要である。本研究では、インスリンシグナルの主要分子であるExtracellular regulatory kinase2(ERK2)の肝細胞、血管内皮細胞、脂肪細胞特異的欠損マウスを用いて、インスリン/ERK2経路が臓器連関に与える影響を検討し、Mets/DM2の病態機序解明と治療分子標的の開拓を目的とする。本期間において、すでに解析が進んでいる肝臓ERK2欠損マウス を用いた薬理的標的探索と内皮ERK2欠損の他臓器への血流調節・代謝を介した連関を中心に検討する。 肝臓特異性ERK2欠損マウスの解析はほぼ完成し、肝臓でのSREBP1発現上昇とAMP-activated kinaseの活性低下が認められ、インスリン抵抗性時の脂肪合成増強が脂肪肝促進に働いていることが分かった。これが多彩な代謝変化を介して内皮障害に働くことが判明した。薬理的にはSERCA Activator CDN1163 が糖尿病の血管障害、インスリン抵抗性、骨格筋機能低下を改善することが判明した。内皮特異性ERK2欠損マウス(EE2KO)の高脂肪食負荷の検討が飛躍的に進んだ。EE2KOでは肥満時にNO合成が亢進して、通常肥満時に認められる血圧上昇が改善され、血管内皮機能が著明に改善した。更に、血管での酸化ストレスが低下し、その機序解析も進捗した。また、EE2KOではインスリン抵抗性が著明に改善し、内皮のERK2が魅力的な薬物標的であることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肝臓特異性ERK2欠損マウスにおける脂肪肝増悪の機序として、SERCA2の機能低下による小胞体ストレスの関与に加えAMPKの低下を認め、薬剤標的となりうることが判明した。また、CDN1163は糖尿病マウスの脂肪肝と血管内皮障害を改善することが判明した。 内皮特異性ERK2欠損マウスでは同等の体重増加にもかかわらず血管内皮機能と脂肪肝、糖代謝の改善を認めた。その原因として血管壁NO産生の増加と活性酸素種の低下を認め、血圧低下の関与が認められた。このことについてシグナル伝達機構を調べたところERK2の下流にThromboxan Receptor (TP Receptor)を同定した。肥満マウスから採取した血管にTP Receptor 阻害剤 S1886を投与したところ活性酸素種の減少と内皮機能の改善を認め、同様の所見をMEK Inhibitorでも認めた。このことより肥満・二型糖尿病の血管障害機序にMEK/ERK/TP Receptor/ROS経路によるNO 生理活性の低下が強く関与していることが分かった。また、現在行っている研究では、肥満食に加S1886を経口投与すると、糖代謝の改善、血管内皮機能改善、血圧低下、脂肪肝の改善を認めている。
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今後の研究の推進方策 |
肝臓特異性ERK2欠損マウス とCDN1163についてはすでにまとまり学会発表を終えているので、論文化を行う。血管内皮特異性ERK2欠損マウスについてはin vivoでのS1886投与が終わったところでさらなる学会発表と論文化を行う。MEK/ERK2/TP receptor経路が人の肥満、糖尿病のDrug Target になるかを今後検討する。また、Gene Chip/Proteomics/Metabolomeを応用して血管内皮でのERK2の役割と新たなDrug Targetを探索する。ERK2が血管内皮において高血圧、動脈硬化、心不全、血管新生などについてどのような役割を果たすかについても検討して、これを標的とする診断・治療法を考案する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度に計画していたものの実施できなかった実験を次年度に行う予定であるため。
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