本研究課題では気管支喘息と慢性閉塞性肺疾患(COPD)の類似性、相違点、および合併病態の解明を行うことを目的としており、COPD患者の血漿検体および難治性喘息患者の血漿検体を用いて、網羅的プロテオーム解析を施行した。COPD患者は喘息様検査所見の有無により2群、難治性喘息患者は非喫煙・好酸球性、喫煙・好酸球性、喫煙・非好酸球性の3群、各17検体を用いた。SOMAscanによる測定で、1238蛋白が解析可能であった。各疾患で臨床的フェノタイプによるプロテオームプロファイルに差はなかったが、COPDと難治性喘息の間には365の蛋白発現の有意な相違を認めた。そして、プロテオームプロファイルの結果のみによるクラスター解析により、COPDでは3つ、難治性喘息では4つのクラスターが同定され、事前に定義された臨床的フェノタイプとは異なる特徴が認められた。COPDは獲得免疫反応、ストレス反応、細胞増殖、ネクローシス反応に関係する蛋白群によりクラスタリングされ、難治性喘息ではストレス、感染、アレルギー性炎症、白血球関連、組織リモデリング、上皮細胞増殖に関連する6つの蛋白群によりクラスタリングされた。そして、COPDの蛋白群および2つの難治性喘息の蛋白群は、有意にエクソソームのマーカーが多く含まれていた。以上より、COPDと難治性喘息の血漿プロテオームプロファイルには違いがあるものの、両疾患のプロテオームによるクラスタリングにはエクソソームが強く関連していることが示唆され、今後も両疾患おるいはその合併病態において、エクソソームの解析は重要となると考えられた。
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