2019年度は前年に引き続き、呼吸音データの収集と解析を進めた。研究協力者とともに間質性肺炎や慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支拡張症などの呼吸器疾患患者から呼吸音データを収集した。近隣の開業医や保健師を交えた聴診所見の検討会を開催し、録音した呼吸音データを用いて、実際の診断名との照会を行い、自動解析の結果との一致率について検討した。また非専門医や医師以外の医療従事者向けの教育ツールを作成し、共有した。録音した呼吸音データの質や再現性、自動解析の正診率については、2017年度と比較して明らかに向上していた。 2018年度に作製したFM電波を用いるワイヤレス聴診装置については、ノイズが多かったため、Bluetoothを用いる形式に変更し、使用感が向上した。診察した医師による診察時の評価と録音した呼吸音を診察医が反復して聴き直した際の評価については、ほぼ100%一致する結果であった。また録音した呼吸音を呼吸器専門医が聴いた際の評価と非専門医である開業医や保健師による評価でも、ほぼ100%の一致率が得られた。聴診に関して医療従事者に対する教育の余地があることが改めて示唆された。 医療機関の間での呼吸音データの送信については問題なく行えることが確認され、電子ファイル化された呼吸音データを用いた診断も可能と考えられた。また自動解析ソフトウェアの改良も進め、呼吸専門医による評価との一致率も改善した。 呼吸音を録音・評価・自動解析に当たって診断不一致の最大の要因であるノイズについては、ノイズキャンセリング技術の向上により診断に支障のないレベルにまで改善が得られている。
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