研究課題/領域番号 |
17K09602
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
佐藤 一洋 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (30436191)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 非小細胞肺癌 / EGFR-TKI血中濃度 / 予後予測因子 / 薬物動態 |
研究実績の概要 |
癌治療の効果および有害事象を治療前に予測できることは大きなメリットである。一般に薬物血中濃度は効果と相関し、副作用の予測と無効域の回避を図ることができるが、我々はGefitinibで治療薬物モニタリング(TDM)を行い血中濃度が効果・有害事象の予測における有用性を示してきたが、TDMは治療前での評価ができないのが弱点である。 今回、Gefitinib以外のEGFR-TKI でもTDMと効果・有害事象との関連を評価する。そして、TDMを補う候補として、血中濃度の予測因子として薬物動態関連酵素あるいはトランスポーターの遺伝子多型をターゲットとし、「薬剤血中濃度のみならず代謝酵素の遺伝的要因からも有効性・有害事象を予測できる」という仮説をたて検証を行う。我々はすでに代謝酵素の遺伝子多型とEGFR-TKI血中濃度の関連も明らかにしており、実現の可能性は高い。この検討は初回投与量の個別化を図ることにもつながり、安全かつ効率的な次世代癌治療ストラテジーを開発することが可能となる。 上記の目的に対し、EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌患者を対象に、EGFR-TKI治療を行い以下の評価を行った。第一の検討として、EGFR-TKI血中濃度と有効性、有害事象の関連を評価した。有害事象、有効性は1se. lineもしくはEGFR-TKIナイーブでの治療で遺伝子変化型ごとに評価した。第二の検討として、薬物動態関連酵素あるいはトランスポーターの遺伝子多型と薬剤血中濃度との関係、治療効果・有害事象との関係を評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、使用薬剤はGefitinib、Erlotinib、AfatinibもしくはOsimertinibで検討を行っている。患者は参加施設もしくは当施設で治療を行うが、治療法の選択は主治医の方針によるため、Gefitinib、Afatinib以外の症例の登録が少なく、予定通りには症例数が集まっていない状況である。 患者のTDMと遺伝子多型の評価は、TDMは超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)、液体クロマトグラフ-タンデム型質量分析計(LC-MS/MS)で、遺伝子多型はCYP3A4*1G、CYP3A5遺伝子多型解析、ABCトランスポーターABCB1 (MDR1; C3435T、G2677T/A、C1236T)、ABCC2 (MRP2;C-24T)、ABCG2 (BCRP;C421A)、SLCトランスポーター SLC22A1(OCT1)、SLCO1B1 (OATP1B1)、SLCO1B3(OATP1B3)、UGT1A1(*6, *28)遺伝子多型を解析しているが、ともに順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
前年から引き続き、EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌患者を対象に、各種EGFR-TKIを投与し、その血中濃度と効果との関連、薬物動態関連酵素、トランスポーターの遺伝子多型と効果との関連を評価する。本研究は、県内の主要病院の呼吸器内科、呼吸器外科でも研究への参加が決定しているが、関連施設からの患者登録が少ないことから、連携を密にし患者登録を図る。 既登録患者については、血中濃度と効果との関連、薬物動態関連酵素、トランスポーターの遺伝子多型と効果との関連を評価する。有害事象の評価とは異なり、効果は遺伝子変異型によっても異なることが予測されるため、各々の遺伝子変異型によっても検討する。耐性となった場合は耐性遺伝子に関しても積極的に評価し、耐性遺伝子のタイプと血中濃度等との関連を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、使用薬剤はGefitinib、Erlotinib、AfatinibもしくはOsimertinibで検討を行っている。患者は参加施設もしくは当施設で治療を行うが、治療法の選択は主治医の方針によるため、Gefitinib、Afatinib以外の症例の登録が少なく、予定通りには症例数が集まっていない状況であった。そのため、TDM、遺伝子多型解析に要する費用を次年度へ繰り越し研究を行う予定である。
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