研究課題
癌治療の効果および有害事象を治療前に予測できることは大きなメリットである。一般に薬物血中濃度は効果と相関し、副作用の予測と無効域の回避を図ることができるが、我々はGefitinibで治療薬物モニタリング(TDM)を行い血中濃度が効果・有害事象の予測における有用性を示してきた。しかし、TDMは治療前での評価ができないのが弱点である。TDMを補う候補として、血中濃度の予測因子として薬物動態関連酵素あるいはトランスポーターの遺伝子多型をターゲットとし、「薬剤血中濃度のみならず代謝酵素の遺伝的要因からも有効性・有害事象を予測できる」という仮説をたて検証を行う。ABCG2は、Gefitinibのトランスポーターの活性を阻害する。そのC421A多型は細胞膜上のABCG2の機能と発現を介して薬物動態に影響することが推測される。その検証のため、EGFR陽性非小細胞肺癌においてGefitinibの血中濃度とABCG2 C421A多型の関連を調査した。2010年5月から2017年9月までに、gefitinibで治療したEGFR陽性非小細胞肺癌の全61症例を対象とし投与開始14日目で血中濃度を測定した。血液サンプルよりPCR–restriction fragment length polymorphism(RFLP)法を用いてABCG2 C421A遺伝子多型を調査した。対象集団をABCG2 C421A遺伝子多型のC/C群とC/AまたはA/A群に分け、gefitinibの血中濃度のトラフ値、ピーク値、24時間のarea-under-curve(AUC 0-24h)を比較した。さらに、遺伝子多型とPPI併用の有無で対象集団を4群に分けて同様に比較した。血中トラフ値は、CA/AA群で有意に低かった。PPI服用患者群でも、トラフ値は、CA/AA群で有意に低かった。ABCG2 C421A多型は、Gefitinibの血中濃度の低下と関連していた。この検討は初回投与量の個別化に応用でき、安全かつ効率的な次世代癌治療ストラテジーの開発につながることが期待される。
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