研究課題
現在までに喘息発症に対するゲノムワイド関連解析(GWAS)によって、P<5.0E-8を満たす遺伝子が126個報告されている。最近、Demenaisらは既報告の喘息GWASをメタ解析し(喘息23,943名、健常者118,538名)、55遺伝子においてゲノムワイド有意水準を満たす一塩基多型(SNP)を報告している(Nat Genet. 2018)。そこで我々は、これら55遺伝子±100 kb領域において、筑波喘息GWAS(喘息244名、健常者967名)でP<0.05を満たすSNPの存在を検索した。その結果、35遺伝子において有意なSNPが確認された。近傍に存在するSNPについては、お互いのSNPにより補正をかけた後にP≧0.05となるものは除外した。最終的に23個の遺伝子(IL1RL2、TSLP、RAD50、SLC22A5、NDFIP1、BTNL2、MICA、BACH2、GJA10、MAP3K7、ZBTB10、RANBP6、GATA3、CELF2、EMSY、LRRC32、RORA、VPS13C、SMAD3、SMAD6、DEXI、SOCS1、ZNF652)において23SNPが抽出された。次にこれら23SNPについて、喘息発症のリスクアレルと、オッズ比(OR)を抽出した。各SNPについての喘息発症遺伝的リスクスコアは、リスクアレルが0、1、2個の場合には、それぞれ1、OR値、OR値の2乗として計算した。各個人について23SNPの喘息発症遺伝的リスクスコアを求め、さらにこれらをすべて合算して個人の喘息発症トータル遺伝的リスクスコアとした。筑波GWASコホートにおいて、喘息群と健常者群の喘息発症トータル遺伝的リスクスコアをt-検定により比較したところ、喘息群32.2±1.4(平均±SD)、健常者群31.0±1.4となり、有意に喘息群の方が高い値を示した(P=3.18E-30)。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究計画調書では、平成29年度は既報告の喘息GWASからゲノムワイド水準を満たす遺伝子を抽出し、その遺伝子領域において筑波喘息GWASでp<0.05を満たすSNPを抽出すること。次にそれらのSNPから喘息発症トータル遺伝的リスクスコアを計算し、喘息群と健常者群の値を統計的に比較すること。さらにSNPの組合わせを変えて喘息発症トータル遺伝的リスクスコアを計算し、ROC曲線から最も喘息発症の診断能が良いSNPの組合わせを検定することであった。喘息発症の診断能が高いSNPの組合わせの検討はできていないが、それ以外は年度内に実施できており、研究はおおむね順調に進展している。
現在までに世界中で行われた喘息発症に対するGWASによって、ゲノムワイド水準を満たす喘息関連遺伝子が122遺伝子報告されている。このうち、55遺伝子領域については筑波喘息GWASの結果を用いて、喘息発症トータル遺伝的リスクスコアを計算し統計解析を終了した。本年度は残りの遺伝子領域について、筑波喘息GWASの結果から喘息発症遺伝的リスクスコアを計算する。さらに、SNPの組合わせを変えて、最も喘息発症の診断能が良いSNPの組合わせを検定する。次に、独立した再現研究コホート1(喘息334名、健常者397名)と再現研究コホート2(喘息565名、健常者998名)の全対象者について、選択されたSNPの遺伝子型を決定する。その結果から個人の喘息発症トータル遺伝的リスクスコアを計算し、喘息群を健常者群の間での有意差が再現されるかを検証する。さらに、喘息発症トータル遺伝的リスクスコアと種々の喘息フェノタイプや、アトピー素因、総IgE値、低肺機能などの喘息関連表現型・危険因子などとの関連を解析する予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件)
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