研究課題/領域番号 |
17K09603
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
坂本 透 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (50282356)
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研究分担者 |
檜澤 伸之 筑波大学, 医学医療系, 教授 (00301896)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 喘息 / ゲノムワイド関連解析 / 遺伝的リスクスコア |
研究実績の概要 |
遺伝的リスクスコアによる喘息発症の予測精度を高めるため、既報告の喘息ゲノムワイド関連解析(GWAS)においてゲノムワイド有意水準を満たす114個の一塩基多型(SNP)の中から、遺伝子発現に影響を及ぼす量的形質座位を選択し、さらにこれらの中から筑波喘息GWAS(喘息244名、健常者967名)でP<0.1を満たす41SNPsを抽出した。発現影響を受ける遺伝子は、PEX14、PYHIN1、CD247、TNFSF4、CRB1、ADORA1、TACR1、EVA1A、IL1RL2、D2HGDH、TLR1、TENM3、DCTD、WDR36、TSLP、SLC22A5、IL4、GNPDA1、NOTCH4、PBX2、HLA遺伝子群、MICA、HCG22、TRIM27、BACH2、MAP3K7、ZBTB10、CDH17、GATA3、JMJD1C、IKZF4、SMAD3、AAGAB、PGAP3、ORMDL3、IL2RBであった。遺伝的リスクスコアは、筑波喘息GWASにおける各SNPのリスクアレルとオッズ比(OR)より、(OR)^(リスクアレル数)として計算した。さらにこれらをすべて合算して個人の喘息発症トータル遺伝的リスクスコアとした。筑波喘息GWASコホートにおいては、喘息群59.1±2.2(平均±SD)、健常者群57.4±2.1となり、有意に喘息群の方が高い値を示した(P=3.00E-30)。喘息発症トータルリスクスコアは、アレルギー性鼻炎発症、総IgE値、肺機能とは有意な関連および相関はなかった。 現在、新たな独立したコホート(喘息539名、健常者566名)について、全染色体に分布する約62万個のSNPsの遺伝子タイピングを解析している。この新たなコホートにおいて、喘息群と健常者群の喘息発症トータルリスクスコアの有意差検定を行い、このスコアの有用性を検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝的リスクスコアによる喘息発症の予測精度を格段に高めるため、新たに既報の喘息GWASで示されている喘息関連SNPsから量的形質座位を選択し、さらに独自の筑波喘息GWASのP値から候補SNPsを絞り込んだ。これにより、より一般的に喘息発症の予測が可能になることが期待される。 新たなコホート(喘息539名、健常者566名)について、約62万SNPsのゲノムワイド遺伝子タイピングもほぼ終了し、本年度中には独立したコホートでの喘息発症トータル遺伝的リスクスコアの有用性を検証できる予定である。さらにSNPの組合わせを変えて喘息発症トータル遺伝的リスクスコアを計算し、ROC曲線から最も喘息発症の診断能が良いSNPの組合わせを検定することも可能である。 以上の研究進捗はほぼ予定どおりに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
新たなコホート(喘息539名、健常者566名)について、約62万SNPsのゲノムワイド遺伝子タイピングを終了させる。既存の筑波喘息GWASに含まれ、新たなゲノムワイドタイピングには含まれないSNPsについてはimputationにより遺伝子型を推測する。これにより、独立したコホートで喘息発症トータル遺伝的リスクスコアを計算することが可能になり、このスコアの有用性の検証ができる。また、喘息に関連する表現型や危険因子と喘息発症トータル遺伝的リスクスコアの関連も解析する。 我々は1312名の健常者コホートを前向きに追跡調査を行っており、8年の追跡で約50名の新規喘息発症者が検出されている。この前向きコホートについても喘息発症トータル遺伝的リスクスコアを計算し、このスコアによる喘息発症の予測能を評価する。 さらに、選択された喘息感受性SNPsについての生物学的な関連性を調べるため、感受性遺伝子・分子のネットワーク解析を行う。 これらの解析により、喘息の病態がより一層明らかになることが期待される。
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