研究課題
本研究の目的は肺高血圧症における腸内細菌叢の異常の有無の検討とその異常が肺高血圧症の病態発生に与える影響について検討することにあった。肺高血圧症モデルラットにおける腸内細菌叢解析では肺高血圧症でないラットと比較し、腸内細菌叢の組成が異なることを明らかにした。さらに腸内細菌叢の異常が肺高血圧症の原因か結果かについて検討するため、肺高血圧症ラットに4種類の抗菌薬を同時投与し腸内細菌叢の組成を意図的に変化させる検討を行った。その結果、抗菌薬を投与されたラットでは肺高血圧症の進行が抑制されることを発見した。BMPR2やALKなどの遺伝子異常など肺高血圧症を発症するリスクを持った患者において、肺高血圧症を予防する方法は今までに発見されていなかった。本研究の成果は何らかの方法で腸内細菌叢を改変することで肺高血圧症の進行を予防することができることを示すものである。肺高血圧症の病態解明のみならず、これまでにない肺高血圧症の予防や治療に新しい光を当てるものであると考えられる。さらに我々は肺高血圧症の1タイプである慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)患者での腸内細菌叢解析では、いくつかの菌種で平均肺動脈圧、肺血管抵抗値などの肺高血圧症の重症度の指標と相関することが明らかとなった。動物実験のみならず、ヒトの肺高血圧症においても腸内細菌叢異常が病態進行に影響を与えている可能性が高まった。本研究の成果は2019年9月スペイン マドリードで開催された欧州呼吸器学会国際会議 2019で、「The effect of altering gut microbiota on the development of pulmonary hypertension」の演題名でポスター発表を行った。さらに研究成果をまとめた論文はPulmonary Circulation誌で受理され、公開された。
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Pulmonary Circulation
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10.1177/2045894020929147