研究課題/領域番号 |
17K09606
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
笠原 寿郎 金沢大学, 医学系, 准教授 (30272967)
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研究分担者 |
曽根 崇 金沢大学, 医薬保健学総合研究科, 特任准教授 (30420334)
木村 英晴 金沢大学, 医学系, 助教 (40444202)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | cMet / シグナル伝達 / HGF / 非小細胞肺癌 / Met阻害剤 |
研究実績の概要 |
我々は、cMet蛋白発現、リン酸化をWestern blot法で検討したところ、5細胞株(PC-9/Met, EBC-1, H1993, H441, H2228)でcMet高発現、Metのリン酸化亢進を認めた。その他の5種類ではcMet発現は弱くリン酸化も低かった。cMet蛋白量とリン酸化Met(pMet)量は強い相関を示した。さらにcMetのLigandであるcMetを添加して実験を行った。PC-9, PC-9/Met, A549, EBC-1細胞株にHGFを添加した実験では、Metリン酸化亢進が認められた。またMet阻害剤(SU11274)でHGF刺激によるMetリン酸化がキャンセルされた。HGF刺激の元で下流シグナルの変化を発現解析したところ、cMetと関連しHGF刺激で増加するパターンは29遺伝子,減少するパターンは138遺伝子が挙げられた。さらに詳細な解析を追加する予定である。 また現在までに手術症例の検体、及び進行肺癌症例の検体をそれぞれ、約150検体、約120検体収集した。同時に臨床情報を集積しているが、患者背景と一部の症例で予後、再発形式の情報が収集されている。。手術検体では検体の質が良好であるが、分子生物学的解析には優れている。進行肺癌の症例は気管支鏡下肺生検、CTガイド針生検の検体であり、微小なものが認められ、解析に不適切なものも含まれている。検討の中でHE染色の所見をのみでは選別できなきことが明らかとなり、患者選択、検体の選択を考慮する必要があることが分かった。現時点ではDNA,RNAの抽出を行ってみないと選別は難しい古語が判明しており、残念ながら利用検体なものすべてで行う方針に変更している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
検討1であげた細胞株を用いた実験では着実な進歩が得られている。現在発現解析で得られた情報をもとに淡白発現解析を準備している。多くの候補遺伝子があげられたため従来のWestern blot法では検討に多くの時間と費用がかかると考えられるため、抗体アレイを用いた解析を予定している。抗体アレイをカスタムする必要も考えており、現在検討中である。 検討2臨床検体は研究開始前から収集しており、約70検体、約50検体収集した。手術検体では検体の質が良好であるが、進行肺癌の症例は気管支鏡下肺生検、CTガイド針生検の検体であり、微小なものが認められ、解析に不適切なものも含まれている。HE染色の所見をもとに適切な検体を選別する作業を行う。さらに患者背景からも重複癌など不適格症例の選別を行っている。 検討3.上記2)で得られた情報を臨床検体にfeedbackして免疫染色、変異解析等で検討する。またEGFR変異陽性, ALK転座陽性などdriver変異陽性症例との比較検討することで、Met遺伝子陽性・増幅症例の臨床像を明らかにすることで、今後の個別化に寄与する。 ○検討1においてMet遺伝子異常と付加的増殖因子・増殖因子受容体のなどの関連、薬剤耐性との関わりが同定できる。○検討2においては臨床検体を用いることでMet遺伝子異常を有する症例のより詳細な情報が明らかとなる。○検討3では2の情報を総合して臨床例で解析することによりMet阻害剤の適切な対象を絞り込み、併用療法の対象を絞り込みを行う。
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今後の研究の推進方策 |
我々は肺癌細胞における増殖因子受容体cMetと核内DNA複製酵素のTopoisomeraseI(TopoI)の関連について検討した。検討に用いたのは10種類の肺癌培養細胞株(EBC-1, H441, PC-9, PC-9/Met, A549, H2228, H1975, H1993, H596, H358)である. 現在までの検討ではcMetとTopoIの間には関連が認められている。cMetがTopoIを制御している可能性が示唆され、臨床検体を用いてこの関連を確認中である。
我々の仮説であるcMetが直接的にTopoIの蛋白発現、活性を制御しているという仮説は証明された。TopoI発現とTopoI 阻害剤であるSN38感受性の間に弱い相関しか見られていないがcMetとのSN38感受性の関連は確からしい。この知見を如何に臨床応用するか、という面では臨床検体を用いた解析が乏しく情報がないに等しい状態である。腫瘍検体を用いた解析が必要と考えられるので現在この準備中である。一方でHGFによるMet刺激、cMet阻害剤によるMetリン酸化阻害によりTopoI蛋白発現が変動していることは、さらに検討する価値があると考えられる。
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