研究課題
肺線維症は肺の線維化を主体とする難治性,進行性の致死的疾患で,発症や進展機序の更なる解明が望まれている。現在のところ,何らかの刺激によって上皮障害が惹起され,続いて線維芽細胞が活性化して異常な組織修復として線維化が進展すると考えられている。本研究では,肺線維化形成過程における内皮細胞の機能に着目し、エアロゾル化ブレオマイシン肺線維化モデルを作成し、線維化肺組織より回収した肺血管内皮細胞を用いて,肺線維化過程における内皮細胞機能を検討する。前々年度、前年度および当該年度においては、C57BL/6マウスにエアロゾル化したブレオマイシンを経気道的に注入し、ブレオマイシン誘導性肺線維化モデルマウスを作成した。投与7、14、21、28日後にそれぞれ肺組織を回収し、HE染色およびトリクローム染色で肺組織を病理学的に検討したところ、細胞浸潤は投与後7日で観察され、線維化はブレオマイシン投与21日後で著明であった。これら組織学的変化はびまん性に生じており、エアゾル化ブレオマイシン投与によって肺線維症モデルが形成可能なことが確認された。線維化の形成は、気管支肺胞洗浄の細胞解析やヒドロキシプロリン測定にても確認された。続いて同組織より血管内皮細胞の分離を試みた。研究計画にそった方法で抗体を用いて高純度の血管内皮細胞の分離が可能であった。この細胞よりRNAを抽出しRT-PCRを実施、TGFβやCTGFなどの線維化メディエーターや炎症性サイトカインの発現を確認、内皮細胞の間葉転換を生じている事が明らかとなった。これらの変化はTGF-β刺激により増幅された。またNOやPG産生で評価する内皮機能は低下していることが明らかになった。この結果の一部は学会、論文発表を行った。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、ブレオマイシン誘導性肺線維化モデルマウス作成と肺血管内皮細胞の機能解析、間葉系転換の検討が実施され、一部の結果を論文報告できている。線維芽細胞との共培養による内皮機能の検討も順調に進んでいるが、新型コロナウイルス感染症の影響により最終的な報告のための準備が延期となったため、研究期間を延長している
現在、実施中の線維芽細胞との共培養による内皮機能の検討の発表に備え、準備を行う予定。
コロナウイルス感染により実施、発表スケジュールが変更になったため
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
BMC Pulm Med
巻: 20 ページ: 21
10.1186/s12890-020-1054-9.
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巻: 0 ページ: 0
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