研究課題
重症感染症における二次性感染モデルとして、汎発性腹膜炎による敗血症+二次性緑膿菌肺炎モデルマウスを作成し、敗血症発症後に免疫賦活作用をもつrecombinant human Interleukin-7 (IL-7)を投与したマウス群の生存割合がコントロール群よりも有意に高いことを証明した(Shindo, et al. JLB 2017)。また免疫チェックポイント阻害作用をもつ抗PD-1ペプチド投与によりにより敗血症モデルマウスの生存割合が有意に改善されることも証明した(Shindo, et al. JSR 2017)。現在は重症呼吸器感染症、敗血症に対する上記IL-7に代表される新規免疫療法の開発をすすめるために、上記マウスモデルを使用した免疫機序を解明するための実験を継続している。IL-7はリンパ球系の細胞の発達、増殖、恒常性維持に重要な役割をもつサイトカインである。我々の重症呼吸器感染症(重症肺炎)、敗血症モデルにおいて、T細胞、B細胞、自然リンパ球などのリンパ球系細胞のアポトーシス、細胞増殖能、サイトカイン分泌などの機能がどのように変化し、これらがIL-7によりどのように変化し治療効果が得られるかをみるための研究を推進している。さらに、市中発症の重症肺炎、外科手術後に肺炎を発症した患者におけるリンパ球と好中球の役割を生存群と死亡群で比較する臨床研究も実施しており、死亡群と生存群間には、肺炎発症後にかけてリンパ球数や好中球数の推移に乖離がある結果を得ており、これらの機序解明に向けた研究を展開している。
2: おおむね順調に進展している
・重症呼吸器感染症、敗血症の治療に有用と考えられる新規免疫療法の候補はIL-7、抗PD-1/PD-L1抗体(またはペプチド)などに決めることができている。・IL-7、抗PD-1/PD-L1抗体は主にリンパ球に作用する物質であるが、予後不良で重症呼吸器感染症と位置付けることができる外科術後肺炎症例におけるリンパ球の重要性を示唆する結果を得ることができている。・市中発症の重症肺炎、外科術後肺炎における好中球のプロファイルが異なり治療ターゲットになり得る可能性があるため、その病態解明に向けた実験も進めている。
1)動物モデルを使用した研究:重症感染症(敗血症)と二次性緑膿菌肺炎モデルマウスにおけるIL-7、PD-1/PD-L1ペプチドによる生存改善効果は証明した(Shindo, et al. JLB 2017; Shindo, et al. JSR 2017)ため、この生存改善効果に関わる免疫機序を解明するための実験を行う。具体的には、モデルのおけるT細胞、B細胞、自然リンパ球などのリンパ球系細胞の細胞死の状態評価、細胞増殖能、サイトカイン分泌などの機能と、IL-7、PD-1/PD-L1ペプチドなどの新規免疫療法候補物質がこれらの免疫細胞とその機能にどのような変化・影響を与えるかを評価する実験を行う。2)患者サンプルを使用した研究:我々の過去の研究結果(Shindo, et al. Lancet Infect Dis 2015)に基ういて、適切な抗菌治療を行っても死亡リスクが高い患者群を研究にエントリーし、これらの患者のサンプルを用い、リンパ球、好中球を中心とした免疫細胞の細胞死の状態評価、細胞増殖、サイトカイン分泌能などの機能解析をフローサイトメトリー法を用いて行い、また血漿中の炎症性、抗炎症性サイトカイン分泌にかんする解析を継続して行う。生存群と死亡群を比較し、動物モデルで証明された新規免疫療法候補物質の使用方法を提案できるような研究を推進していく。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件)
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