研究実績の概要 |
協力7施設より前向きに特発性肺線維症52症例をエントリーし、血液検体を収集した。遺伝子解析は、11番染色体のMUC5B, TOLLIPを含む領域と、テロメア関連遺伝子(TERT, TERC, RTEL1, PARN)領域を予定している。11番染色体領域のPCRは条件設定が完了し、他の遺伝子のPCR条件を設定中である。また、テロメア長のPCR条件設定を行い、解析可能となった。予後因子としての遺伝子変異、バイオマーカーの意義について検討するため、京都大学医学部附属病院を受診した特発性肺線維症49例を対象にベースラインと6か月後の血中バイオマーカー(KL-6、SP-D、MMP-7・MMP-10、S100A12)を測定し、生命予後や臨床的悪化との関連について検討した。生命予後に関する単変量解析では、Composite Physiologic Index (CPI)などの生理学的指標に加えて、⊿KL-6(ハザード比1.002、95%信頼区間1.000-1.004、p= 0.009)、SP-D(ハザード比1.004 、95%信頼区間1.002-1.006、p= 0.001)、MMP-10(ハザード比7.087、95%信頼区間2.127-23.61、p= 0.001)、⊿MMP-10(ハザード比3.739、95%信頼区間1.140-12.27、p=0.030)が有意な因子であった。年齢, 性別, CPI, 抗線維化薬の有無で補正した多変量解析では、⊿MMP-7(ハザード比2.053、95%信頼区間1.360-3.100、p<0.001)のみが血液バイオマーカーの独立した予後因子であった。⊿KL-6や⊿MMP-10は単独では有用な予後の指標であるが、呼吸機能の変化との相関が認められることから、独立した因子ではない可能性がある。一方で、⊿MMP-7は生理指標とは独立した予後因子である可能性がある。今後症例を蓄積して、末梢血テロメア長、遺伝子多型を含めた予後因子の解析も進める予定である。
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