研究課題
特発性肺線維症90症例をエントリーし、77症例で12か月の経過をフォローした。対象症例は、抗線維化薬投与群52例(ピルフェニドン15例、ニンテダニブ37例)と、非投薬群25例であった。末梢血テロメア長はquantitative PCRで測定し、結果はtelomere geneとsingle copy geneの比率(T/S比)で示した。テロメア長に影響しうる血中メディエータとして、CXCL1、IL-8、MCP-1、ICAM-1をベースラインと6か月後に測定した。末梢血テロメア長は年齢と弱い負の相関を示した(r=-0.356, P<0.05)。喫煙歴による有意差はなかった。抗線維化薬非投薬群では6か月後、12か月後のFVC低下率が抗線維化薬投与群と比較して有意に大きかった。抗線維化薬投与群ではベースラインと比較して12か月後のT/S比が有意に増加していたが、非投薬群では有意な変化を認めなかった(ベースラインからの変化率:抗線維化薬投与群1.026+/-0.037 vs 非投与群1.016+/-0.032)。血中IL-8、MCP-1、ICAM-1の経時変化に関しては、抗線維化薬投与群において非投薬群と比較して増加が少ない傾向が認められた。ベースラインから6か月間(r=-0.461, P<0.01)および12か月間(r=-0.359, P<0.05)のテロメア長の変化率は血中MCP-1の変化率と負の相関関係を認めた。付随研究として、全ゲノムシークエンスを行った。IPF患者77検体のうち1名にRTEL1, 1名にTERCの機能欠損が予測されるミスセンス変異を同定した。以上より、特発性肺線維症の末梢血テロメア長は抗線維化薬の投与によって伸長する可能性があり、MCP-1などのメディエータがその機序に関与している可能性が示唆された。今後24カ月までテロメア長の変化をフォローするとともに、特発性肺線維症の血中テロメラーゼ活性を評価する事を予定している。
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BMC Pulmonary Medicine
巻: 19 ページ: 247
10.1186/s12890-019-1012-6