研究実績の概要 |
喘息は、咳、喘鳴、息切れなどを主症状とし、世界でも約3億人以上が罹病していると推定され、日本での有症率も約3-9%で年々増加している。吸入ステロイド薬(ICS)を中心とした治療により、気管支喘息患者の管理は顕著に改善したが、長期の喘息患者の検討でも、完治は困難で、長期的には呼吸機能の低下(Oga T, et al. Ann Allergy Asthma Immunol 2002)やQOLの悪化(Oga T, et al. J Clin Epidemiol 2005)がみられ、一部には複数の長期管理薬使用下でもコントロール不良な重症喘息患者も存在する。重症例には抗IgE 抗体や抗IL-5 抗体といった生物製剤が必要となるが、これら生物製剤は高額であり、新たな小分子薬の開発が望まれている。我々は、細胞膜に存在する水チャネルの一つであるアクアポリン3(AQP3)に着目し、AQP3 欠損マウスに喘息モデルを適用し、AQP3 がアレルギー性炎症の惹起に重要であることを明らかにし(Ikezoe K, Oga T, et al. Sci Rep 2016)、喘息の新たな治療標的分子となりうる可能性を証明し、提唱した。そこで、本研究においては、ヒト喘息患者でのAQP3の役割を検討し、創薬の基盤となる研究を展開することを目的とする。 2017年度の主要目的としては、ヒト喘息肺サンプルを用いたAQP3の分布の検証、ならびに、ヒト喘息患者における喀痰上清中AQP3 濃度を測定し、他の炎症指標・臨床指標との関連を解析し、新規バイオマーカーとしての可能性を探索することである。
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