研究実績の概要 |
2019年度は、アトピー型重症喘息例の誘発喀痰上清中のアクアポリン(AQP)3と血清中のIL-18、喀痰中の細菌検出との関係に着目して検討した。IL-18はTh1・Th2系炎症の双方に関わるサイトカインとしてアトピー型重症喘息でも重要とされるが、IL-18の最大の役割は、T細胞やNK細胞からのIFN-γの産生を誘導し、抗微生物作用を発揮する点である。また喀痰中のグラム陰性(GN)桿菌の存在は喘息において好中球性気道炎症の惹起に関与する。AQPは皮膚などでは保湿機能から抗微生物活性を有する可能性が示されているため、今回AQP3の防御的作用の可能性について解析を行なった。結果、アトピー型重症喘息例において喀痰AQP3は血清IL-18と有意に正に相関した(rho = 0.42, p = 0.039)。喀痰AQP3濃度や血清IL-18値と喀痰での病原細菌やGN桿菌の検出頻度に関連はなかったが、血清IL-18値により層別解析を行なったところ、IL-18高値群において、GN桿菌検出例では非検出例に比し有意に喀痰AQP3濃度が低かった(p < 0.0001)。この結果はGN桿菌検出に対する血清IL-18と喀痰AQP3濃度との交互作用の解析でも確認された。即ちIL-18とAQP3が共に高い例では下気道のGN桿菌定着を抑制しうる可能性が示唆された。平成30年度に確認された喀痰AQP3との関連がみられた喀痰IL-12, IL-13, IL-10などではこの様な関連はみられなかった。
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