研究課題
肺線維化におけるNETsの役割を解明するために、まず、臨床像との関連を調べる目的で間質性肺炎患者検体中(血清、気管支肺胞洗浄液)のNETsを検出し、その臨床的特徴との関連を解析した。対象は、長崎大学病院呼吸器内科で特発性肺線維症、皮膚筋炎関連間質性肺炎、関節リウマチ関連間質性、放射線肺障害と診断された患者の血清および気管支肺胞洗浄液。コントロールとして、健常人の血清および気管支肺胞洗浄液を用いた。NETsの検出は、MPO-DNA複合体(ELISA)、αデフェンシン(ELISA)の定量により行った。結果:特発性肺線維症患者血清検体では、MPO-DNA複合体量に健常人との差はなかったが、気管支肺胞洗浄液では健常人と比較して有意に高値を示した。また、臨床像との関連においては、気管支肺胞洗浄液中MPO-DNA複合体量とKL-6値に正の相関、また、%DLcoと負の相関を認めた。また、皮膚筋炎関連間質性肺炎においては、気管支肺胞洗浄液中のαデフェンシン値と画像所見に有意な相関を認めた。リウマチ関連間質性肺炎患者から得られた血漿および気管支肺胞洗浄液中のデフェンシン値は健常群と比較し有意に高値であった。また、気管支肺胞洗浄液中の好中球比率と気管支肺胞洗浄液中デフェンシン値は正の相関を認めた。さらに、血漿中のデフェンシン値は、血清抗CCP抗体値と有意な相関を認めた。以上の結果から特発性肺線維症、皮膚筋炎関連間質性肺炎、関節リウマチの病態においてNETsがバイオマーカーとして有用である可能性を明らかにした。
3: やや遅れている
臨床的検討に関しては順調に進んでいるが、細胞および動物モデルを用いた検討に関しては十分な検討が進んでいない。
臨床的検討で得られた結果をもとに、肺線維化とNETsの関連について細胞および動物モデルを用いた検討を進める予定である。
昨年度は細胞実験等を行うことができず、残が生じた。本年度は昨年度分予定していた細胞実験等もあわせた研究を行う予定である。
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