研究課題/領域番号 |
17K09622
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
金澤 博 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (90332957)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 慢性閉塞性肺疾患 / 急性増悪 / 微小血管透過性 |
研究実績の概要 |
前年度の研究内容をさらに深化させて、COPD増悪時の微小血管透過性亢進とインフラマソーム活性化の関連性に関して検証を加えた。経過観察期間内に増悪を経験したCOPD患者に対して、気道上皮被覆液を中枢気道と末梢気道から個別に採取し、微小血管透過性の指標を算出した。そして、COPD増悪の病態における微小血管透過性の関与をさらに多くの症例を重ねることで、普遍的な病態モデルの構築に努めた。これまでにCOPDの気道炎症やその増悪時の炎症増幅にhigh mobility group box 1 (HMGB1) が関連因子として重要であることを明らかにしてきたが、さらに、Damage-associated molecular patterns (DAMP)としてのHMGB1が、インフラマソームを活性化し、微小血管透過性の亢進を誘導するという仮説を検証するために、気道上皮被覆液中のHMGB1, IL-1β, IL-18を測定し、非COPD喫煙者、非喫煙者と比較検討した。その結果を通して、COPDの細気道レベルにおけるHMGB1-Inflammasome系の連関という病態メカニズムを構築した。次に、現在、COPDの治療薬として臨床応用されている各種薬剤の気道微小血管透過性に及ぼす薬理作用について検討した。今日までの大規模臨床試験にて、COPD患者に対して増悪抑制効果が明らかにされている薬剤は、長時間作用型気管支拡張薬(抗コリン薬、β2刺激薬)、吸入ステロイド薬、及び、これらの配合薬である。これらの治療薬の投与前後で気道微小血管透過性を測定し、我々の微小血管透過性理論から見たこれらの薬剤の増悪抑制に対する効果を検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年、平成30年度の研究計画に沿って、おおむね順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
当研究は、細気道レベルに局在する病態生理学的異常を鋭敏に評価することが可能であるマイクロサンプリング法という独自の手法を用いて、COPDの増悪機序を細気道レベルにおける微小循環障害による血管透過性亢進の観点から解明し、現在のCOPD患者の長期管理における主要課題であるCOPD増悪の予防と管理のための論理的基盤を提供するものである。今日、気流閉塞の程度が軽度である軽症COPD患者の中にも頻回の増悪を経験する患者群が存在すること、及び、同じ臨床病期でも増悪回数にばらつきが存在することが注目されており、このような臨床上の難解な課題の解決にもつながってゆく重要な研究課題である。そして、増悪を起こしやすいフェノタイプの分別という極めて重要な臨床上の課題を克服するためにも有用である。今回の研究成果から,増悪を起こしやすい患者を鋭敏なバイオマーカーを用いて鑑別し,増悪の予防や入院に至る前に介入を行うことで,COPD の予後の改善につなげてゆくことの実現に寄与してゆきたい。さらに、COPDの診断基準を満たさない長期喫煙者の中から急性増悪をきたしやすい群を分別し、今日の懸案である早期薬物治療の是非に関しても取り組む方針である。最終的には、COPD増悪に対する画期的で斬新な治療法の開発や創薬の可能性を現実化するという目標に向けて研究を発展させてゆきたい。
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