研究課題
我々の施設で考案したマイクロサンプリング法を用いて、中枢気道と末梢気道から気道上皮被覆液を分離採取し、中枢気道と末梢気道レベルでの微小血管透過性を個別に評価した。特に、安定期COPD患者における末梢気道レベルでの微小血管透過性に注目し、今回の研究期間である3年間の経過観察期間中におけるCOPD増悪の回数や重症度を反映するバイオマーカーとしての末梢気道レベルでの微小血管透過性の定量化の意義を検証した。結果として、末梢気道レベルでの微小血管透過性は、COPDの増悪を反映する鋭敏なバイオマーカーであることが明らかとなり、COPDの増悪に関する新規病態論を世界に先駆けて確立することに成功した。さらに、COPD増悪のハイリスク群の選別に対する微小血管透過性のバイオマーカーとしての有用性も明らかにした。そして、この新規に同定されたバイオマーカーを用いて、安定期COPD患者の増悪予防に有効な治療戦略を提唱するとともに、従来より臨床応用されてきた増悪急性期の治療薬の有効性を再評価した。次に、今日までの大規模臨床試験においてCOPDの増悪抑制効果を示した複数の薬剤の作用機序を微小血管透過性の観点から解明することに成功した。加えて、sub-clinical COPD群を対象として気道微小血管透過性を定量化した。つまり、COPDの診断基準を満たさない閉塞性換気障害が軽度な重喫煙者の中で頻回の増悪をきたす症例に対して、微小血管透過性の観点から見た最適な治療の選択肢を提案することに成功した。最後に、気道でのインフラマソーム活性化の観点からCOPD増悪時の微小血管透過性亢進を誘導する気道炎症の生化学的機序を明らかにし、抗インフラマソーム薬のCOPDの増悪抑制を目標とした新規治療薬としての可能性を示した。
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