研究課題
気管支喘息は、好酸球や肥満細胞などの集積と活性化を特徴とする慢性炎症性気道疾患であり、Th2サイトカインなどの炎症分子の遺伝要因と環境要因(アレルゲン、気道感染など)の複雑な相互作用(gene-environment interaction)により、発症・増悪する。近年、この相互作用が炎症分子の一塩基多型(SNP)のレベルから明らかにされつつある。これまでの我々の臨床研究の結果から、ストレス反応系の一つであるμオピオイド受容体(MOR)の関与が明らかとなった。さらに、MOR遺伝子一塩基多型(118A/G)がGアレル遺伝型の喘息患者では、ストレスと喘息悪化が有意に相関することを見出した。そこで本研究では、ストレスとMOR遺伝子の相互作用による喘息増悪のメカニズムを中枢神経、内分泌、さらにアレルギー性免疫応答に至る経路から解明することを目的として、マウスモデルを用いた研究を実施する。本年度はまず、MORの細胞外ドメインをコードするエクソン1の118A/Gにおける一塩基多型(AA、AG、またはGG)マウスの個体を作出した。遺伝子型AGの受精卵を代理母マウスに移植し、遺伝子型AGをもつマウスの個体を得た。さらに、遺伝子型AGマウスの掛け合わせにより、遺伝子型AA、AG、またはGGのマウス個体を得た。PCR法を用いた遺伝子型解析の結果、AA、AG、またはGGの各遺伝子型をもつマウスが生まれたことを確認した。各遺伝子型マウスでのストレス負荷による喘息悪化の比較検討実験を行うために、繁殖を行った。
3: やや遅れている
本年度は当初の研究計画に従って、μオピオイド受容体(MOR)遺伝子一塩基多型(AA、AG、およびGG)マウス個体の作出に成功した。しかし、マウス個体を得る過程において、マウス肝炎ウイルス感染の恐れが生じたことから、感染の有無の確認に時間を要したため、当初の予定より個体の作出に遅れが生じた。加えて、遺伝子型GGのマウスのメイティングペアから生まれる仔マウスの個体数が少なく、喘息モデルマウスの作成とフェノタイプの解析に遅れが生じている。
マウスの飼育と繁殖における充分な衛生管理を行う。メイティングのペアを増やすなどして、実験に使用するために充分な数のマウスを確保する。充分な数の各遺伝子多型マウスを得た後、当初の研究計画に従って速やかに、喘息モデルマウスの作成とフェノタイプの解析を行う予定である。引き続き、μオピオイド受容体(MOR)遺伝子一塩基多型が喘息の増悪に及ぼすメカニズムを明らかにするために、中枢性神経応答および末梢免疫応答におけるMOR遺伝子多型の関与を解析する予定である。
研究の進捗過程において、マウスの個体作出が当初の研究計画より遅れたため、本年度中に使用する予定であった経費のうち、各遺伝子多型マウスでのストレス負荷による喘息悪化の比較検討実験に用いるための費用を次年度に繰り越して使用する。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 4件) 備考 (1件)
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