研究課題
気管支喘息は、好酸球や肥満細胞などの集積・活性化を特徴とする慢性炎症性気道疾患であり、Th2 サイトカインなどの炎症分子の遺伝要因と環境要因の複雑な相互作用により、発症/増悪する。この相互作用のうち遺伝要因をつかさどる因子として、喘息病態関連遺伝子の一塩基多型(SNP)は、喘息病態の重症度に影響を及ぼしている。喘息患者は我が国をはじめとした先進国において、近年、増加傾向にあり、環境要因のひとつである精神的ストレスによる喘息の増悪、すなわちストレス誘発性喘息患者の増加が指摘されている。これまでの研究から、この増悪には中枢神経系μオピオイド受容体(MOR)が関与していることが明らかとなった。そこで本研究では、日本人に多いMOR遺伝子(OPRM1)の一塩基多型[SNP; A118G (rs1799971)]と喘息病態との相関性を明らかにする為に、[SNP; A118G (rs1799971)]の多型を有する喘息患者、ならびに同様のSNP(Oprm1 A112G)を有するマウスを用いて、OPRM1 SNP; A118G (rs1799971)が病態の重症度に及ぼす影響とその機序を解明する。本年度は、OPRM1 A118G SNP に相当するOprm1 A112G SNP を有するマウスを用いて、喘息兆候を比較解析した。A112マウスと比較して、G112マウスでは、気管支肺胞洗浄液中の好酸球数および抗原特異的血清IgEならびにIgG1量が有意に増加していた。さらに、気道上皮における粘液産生細胞の割合は、A112マウスと比較してG112マウスにおいて増加していた。これらの結果からOPRM1 A118G SNPは喘息症状の悪化と関連する可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本年度は当初の研究計画に従って、各genotype間での病態重症度の比較解析を行った。これらの研究結果をもとに、喘息病態の悪化に関与する中枢ならびに末梢μオピオイド受容体一塩基多型の影響を解析する研究に着手している。また、genotypeが異なることにより、これまでに報告のない喘息増悪機序を介して喘息兆候を悪化させている可能性が示唆されたため、詳細な解析を追加して実施している。
喘息重症化における末梢MOR genotypeと中枢神経におけるMOR genotypeの影響を明らかにする。引き続き、中枢または末梢におけるgenotypeとストレスとの相互作用から、喘息気道反応の悪化に至る内分泌系および免疫系の関与を明らかにする。
μオピオイド受容体(MOR)遺伝子一塩基多型が喘息の増悪に及ぼすメカニズムを明らかにするために、中枢性神経応答および末梢免疫応答におけるMOR遺伝子多型の関与を解析している。それらの過程において、これまでに報告されている増悪メカニズムによらない新たな喘息増悪経路の存在を示唆する結果を得つつあり、肺および所属リンパ節におけるmRNA発現の詳細な解析を追加して行う必要が生じた。本年度中に使用する予定であった経費のうち、免疫担当細胞のフェノタイプの解析に用いるための費用の一部を次年度に繰越して、次年度の研究経費と合わせて使用する予定である。
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