研究課題/領域番号 |
17K09624
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研究機関 | 東北医科薬科大学 |
研究代表者 |
大野 勲 東北医科薬科大学, 医学部, 教授 (00250762)
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研究分担者 |
曽良 一郎 神戸大学, 医学研究科, 教授 (40322713)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 気管支喘息 / μオピオイド受容体 / 遺伝子多型 / 精神的ストレス / 増悪 |
研究実績の概要 |
気管支喘息は、遺伝要因と環境要因の相互作用により発症/増悪する。我々のこれまでの臨床研究により、喘息病態の増悪に関与する遺伝要因の一つとして、ストレス反応系の一つであるμオピオイド受容体(MOPR)遺伝子の一塩基多型(OPRM1 A118G SNP, rs1799971)の存在が明らかとなった。本年度は、MOPR遺伝子の一塩基多型による喘息増悪への影響を中枢神経、内分泌、さらにアレルギー性免疫応答に至る経路から解明することを目的として、OPRM1 A118G SNPと同様の多型(Oprm1 A112G SNP)をもつマウスを用いて喘息モデルを作成し、比較検討を行った。Oprm1 G112マウスはA112マウスと比較して、日常のストレスレベルにおいて喘息兆候(気管支肺胞洗浄液中好酸球数、抗原特異的IgE量、粘液産生量、気道過敏性)の増悪が認められた。好酸球数の増加に関与するケモカインの肺内産生量を解析したところ、エオタキシン-1のmRNA量が、A112マウスと比較してG112マウスにおいて増加しており、同時に、エオタキシン-1産生細胞の血管周囲への浸潤の亢進が観察された。気管支リンパ節の解析では、抗原吸入後のG112マウスはA112マウスと比較して、IL-4産生エフェクターT細胞ならびに、IL-4産生エフェクターメモリーT細胞の増加が認められた。特に、G112マウスにおいて増加していたメモリーフェノタイプT細胞数は、抗原吸入3か月後においても維持されていた。さらに、G112マウスにおける好酸球数およびT細胞数の増加には、末梢組織に発現するMOPR遺伝子の一塩基多型が関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、当初の研究計画に従って、μオピオイド受容体遺伝子の一塩基多型(Oprm1 A112G SNP)が喘息兆候に及ぼす影響を明らかにした。さらに、喘息モデルマウスにおける好酸球数およびTh2細胞数の増加に関与する中枢神経系におけるμオピオイド受容体遺伝子の一塩基多型ならびに、末梢組織におけるμオピオイド受容体遺伝子の一塩基多型の役割を解析した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究により、日常生活におけるストレス条件下でμオピオイド受容体(MOPR)遺伝子の一塩基多型(Oprm1 G112 SNP)により増悪する喘息病態には、末梢組織に発現するMOPRが重要な役割を果たしている可能性を示唆する結果を得た。一方、日常生活におけるストレス条件下で増悪する喘息病態に対する中枢神経MOPRの関与は限定的であった。これらの結果をより確かなものとするため、中枢神経系MOPRが関与する内分泌応答におけるOprm1 G112 SNPの影響をさらに解析するとともに、末梢組織におけるOprm1 G112 SNPが喘息免疫応答を増悪させるメカニズムについて詳細に解析を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
中枢神経系に発現するμオピオイド受容体の遺伝子一塩基多型と喘息悪化の関連性をさらに詳細に解析するため、本年度中に使用する予定であった経費のうち、内分泌応答の解析に使用する費用の一部を次年度に繰越して使用する。
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