研究課題/領域番号 |
17K09628
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
渡辺 雅人 杏林大学, 医学部, 学内講師 (00458902)
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研究分担者 |
皿谷 健 杏林大学, 医学部, 講師 (40549185)
滝澤 始 杏林大学, 医学部, 教授 (80171578)
田村 仁樹 杏林大学, 医学部, 助教 (80616607)
本多 紘二郎 杏林大学, 医学部, 助教 (20802995)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | sST2 / IL-33 / 好中球 |
研究実績の概要 |
[臨床研究]:<バイオマーカーとして>① 旧コホート140例に加え、② 新たに約50例のコホートを集め、合わせて190例のコホートを解析した。このうち、欠落データがある症例を除外し、約152例で呼気凝集液(EBC)のIL-33、sST2濃度を測定した。EBCのsST2は、喘息患者とアトピー性皮膚炎患者で高いことがわかった。EBCのIL-33は、喘息・COPDオーバーラップ(ACO)患者、喫煙者で高いことがわかった。③ マクロライドの新コホートは、倫理委員会の申請手続きに手間取った。臨床研究法の制定に伴い、介入研究の審査に時間がかかるようになった。本学の倫理委員会で承認を頂いたため、症例の集積を開始する。 <生理活性物質として>我々の臨床研究のコホートでは、EBC中のIL-33が血液中のCXCL8と相関した。また、EBCのsST2が高いと、呼吸機能(%FEV1)が保たれていることがわかった。この結果は、COPD患者で特に顕著だった。 [基礎研究]:初代ヒト気管支上皮(NHBE)細胞と気管支上皮細胞のcell line(BEAS-2B)細胞で、結果が異なったため、NHBE細胞で実験を行った。① sST2の産生刺激:IL-4, -13, TLR2リガンドがsST2産生を促進し、IFNγ、好中球エラスターゼ、ステロイドがsST2産生を促進した。② IL-33の産生刺激:過酸化水素、好中球エラスターゼ、タバコ抽出液がNHBE細胞内のIL-33発現を増強し、高濃度の好中球エラスターゼ刺激はIL-33を細胞外に放出した。③ IL-33はNHBE細胞に作用して、好中球ケモカイン(CXCL8など)、Th17ケモカイン(CCL20)などの産生を増強し、sST2はそれを抑えた。 [総合的解釈]:ヒト気道で、IL-33は好中球性気道炎症を惹起し、sST2はそれを緩和する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画は、順調に推移している。 [順調な点] 臨床研究では、順調に症例を蓄積し、気道でのsST2/IL-33濃度を測定した。バイオマーカー、生理活性物質としての意義を明らかにした。sST2優位は喘息、type-2炎症、IL-33優位は喘息・COPDオーバーラップ(ACO)を示唆し、基礎研究ではこれらを支持する所見を得た。 [当初の計画と異なる点] マクロライド治療のコホート集積に手間取っている。当初の仮説ではsST2優位が好中球性・IL-33優位が好酸球性と考えていた。これまでのデータを総合すると、IL-33優位が好中球性、sST2優位は好中球性炎症を緩和する。
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今後の研究の推進方策 |
これまで得られた知見で、論文を作成する。 何とか、マクロライドコホートの集積を行う。 sST2産生のシグナル伝達機構を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験が順調に推移し、試薬や実験器具の費用を節約できた。 今後に実験に必要な物品を購入する。論文作成の際に、英文校閲の費用を捻出する。
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