• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2017 年度 実施状況報告書

アレルギー疾患における気道粘膜IgAの役割

研究課題

研究課題/領域番号 17K09629
研究機関帝京大学

研究代表者

鈴川 真穂  帝京大学, 医学部, 助手 (20453699)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードIgA / 気道上皮細胞 / 喘息 / サイトカイン / TfR
研究実績の概要

背景:IgAは生体内において1日当たり最も大量に産生される免疫グロブリンであり、粘膜で重要な生体防御機構を形成していると考えられている。アレルギー疾患においては、抗原チャレンジ後、粘膜局所に抗原特異的IgAが増加することが報告されていることからも、アレルギー疾患におけるIgAの重要な役割が推測されるが、これまでアレルギー疾患における粘膜IgAの作用を系統的に研究した報告は見当たらない。近年、腸管上皮におけるIgAの新たな役割が明らかになる等、IgAが再び注目されており、本研究の成果はIgAの予防医学的または治療的臨床応用につながる可能性がある。
目的: IgAによる気道上皮細胞に対する作用を解明することを目的とする。
方法: IgA単量体、IgA単量体+抗IgA抗体による架橋刺激、sIgA(分泌型IgA)、各々による気道上皮細胞株BEAS-2Bに対する作用を解析した。サイトカイン産生レベルをqPCRおよびCBAで測定した。また、これまでに少なくとも4種類のIgAレセプターが同定されているが、気道上皮細胞を活性化するIgAの責任レセプターを明らかにするため、フローサイトメトリーで解析した。
結果:IgA単量体およびIgA単量体+架橋刺激では、BEAS-2Bのサイトカイン産生能に影響を及ぼさなかった一方で、sIgAは濃度依存的にBEAS-2BのIL-6、IL-8、MCP-1、GM-CSFのmRNA発現およびタンパク発現を増強した。sIgAの作用は試せる範囲の濃度検討で、濃度依存的に増強した。レセプター発現を解析したところ、BEAS-2Bは遺伝子レベル、タンパクレベルで既知のIgAレセプターの一種、transferrin receptor (TfR/CD71)を発現しており、その他のレセプターの発現は認めなかった。TfRをSiRNAでノックダウンし、sIgAを作用させたところ、一部サイトカイン産生増強作用が抑制した。
考察:sIgAはTfRを介した気道上皮細胞からのサイトカイン、ケモカイン産生能の増強により、呼吸器炎症を増悪する可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまでに、sIgAが気道上皮細胞株BEAS-2Bからのサイトカイン産生をmRNA、タンパクレベルで増強することを見出した。また、sIgAの作用機序の候補として、BEAS-2Bが既知のIgAレセプター、TfRを発現し、そのノックダウンでsIgAによるサイトカイン産生増強作用が減弱することも確認し、少なくとも一部TfRを介していることが明らかになった。一方で、IgA単量体および抗原による架橋刺激を想定した刺激は作用を示さず、sIgA特異的な反応であることが示唆された。
ここまでの進捗は、ほぼ計画通りであり、次年度以降、臨床検体を用いた研究を開始する予定である。

今後の研究の推進方策

気道上皮細胞株BEAS-2Bを用いたin vitroの実験では、sIgAによるBEAS-2Bの強力な活性化作用が明らかになった。そこで、細胞株ではなくprimary気道上皮細胞で、本研究結果の再現性を確認する予定としている。
また、当初の計画通り、臨床検体を用いた実験を予定している。すなわち、気管支喘息患者など呼吸器疾患の手術肺をIgAおよびIgAレセプター、TfRに対する特異的抗体で免疫染色し、その発現レベルと局在を明らかにする。そして、疾患の重症度やコントロール状況との関連性を解析する予定としている。

次年度使用額が生じた理由

細胞株を用いた実験に必要な経費として、ほぼ計画通りに研究費を使用していたが、予想以上にデータが順調に揃ったため、44332円未使用分が生じた。
しかしながら、次年度はprimary細胞を用いた、より不安定な実験を予定しており、初年度以上に試薬が必要になる可能性があると考えている。
したがって、残金も試薬代として、次年度以降に用いる予定としている。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Baseline serum CXCL10 and IL-12 levels may predict severe asthmatics' responsiveness to omalizumab2018

    • 著者名/発表者名
      Suzukawa Maho、Matsumoto Hisako、Ohshima Nobuharu、Tashimo Hiroyuki、Asari Isao、Tajiri Tomoko、Niimi Akio、Nagase Hiroyuki、Matsui Hirotoshi、Kobayashi Nobuyuki、Shoji Shunsuke、Ohta Ken
    • 雑誌名

      Respiratory Medicine

      巻: 134 ページ: 95~102

    • DOI

      10.1016/j.rmed.2017.12.002

    • 査読あり
  • [雑誌論文] TBX4 is involved in the super-enhancer-driven transcriptional programs underlying features specific to lung fibroblasts2018

    • 著者名/発表者名
      Horie Masafumi、Miyashita Naoya、Mikami Yu、Noguchi Satoshi、Yamauchi Yasuhiro、Suzukawa Maho、Fukami Takeshi、Ohta Ken、Asano Yoshihide、Sato Shinichi、Yamaguchi Yoko、Ohshima Mitsuhiro、Suzuki Hiroshi I.、Saito Akira、Nagase Takahide
    • 雑誌名

      American Journal of Physiology-Lung Cellular and Molecular Physiology

      巻: 314 ページ: L177~L191

    • DOI

      10.1152/ajplung.00193.2017

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Antibody therapy for the management of severe asthma with eosinophilic inflammation2017

    • 著者名/発表者名
      Ohta Ken、Nagase Hiroyuki、Suzukawa Maho、Ohta Shin
    • 雑誌名

      International Immunology

      巻: 29 ページ: 337~343

    • DOI

      10.1093/intimm/dxx045

    • 査読あり
  • [学会発表] 血中サイトカインを用いたオマリズマブの治療効果予測因子の検討2017

    • 著者名/発表者名
      鈴川真穂
    • 学会等名
      第66回 日本アレルギー学会学術大会

URL: 

公開日: 2019-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi