研究課題/領域番号 |
17K09630
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
寺崎 泰弘 日本医科大学, 医学部, 准教授 (50332870)
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研究分担者 |
寺崎 美佳 日本医科大学, 医学部, 助教 (50372785)
渡辺 憲太朗 福岡大学, 医学部, 教授 (80158625) [辞退]
三宅 弘一 日本医科大学, 医学部, 教授 (90267211)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | PPFE / 骨髄移植関連肺病変 / UIP / 弾性線維新生 / 早期線維化巣 / 疾患マーカー / RAS |
研究実績の概要 |
特発性上葉優位型肺線維症(Pleuroparenchymal fibroelastosis:i-PPFE)、骨髄移植関連2次性parenchymal fibroelastosis:s-PPFE)、 通常型間質性肺炎(Usual interstitial pneumonia:UIP)病変について病変分布、病理学的特徴、弾性線維・早期線維巣の病態を中心に比較検討した。特発性PPFEは肺尖部主体に胸膜下、小葉間、気管支血管など広義間質周囲の肺胞虚脱を伴う弾性線維増生性病変で、壁在型の早期線維巣やリンパ球、好酸球の浸潤、間質リンパ管増生が目立った。骨髄移植例にも同様の弾性線維増生があったが、下葉にも同様病変がみられ、BOや OP所見も伴い気管支血管周囲に目立つ例があった。一方、東京大学外科の佐藤は、肺移植後慢性拒絶にはBOだけでなく,末梢肺に病変が及び拘束性障害来す予後不良な拘束性同種移植片症候群restrictive allograft syndrome (RAS)がみられる事を提唱した。このRASは、我々が解析した骨髄移植関連s-PPFE病変と共通した病変である。今年度は移植肺の肺移植後慢性拒絶により死亡した解剖例を解析した。BOの他に、びまん性肺胞傷害(器質化型+滲出型)から急性線維素性器質化肺炎AFOP様の病変が広範に広がっていた。一部、下葉のAFOP病変の近傍には、気管支血管周囲の気腔内線維化部位にelastosisが増生する部位がみられRAS様所見があった。RASによるPPFE様病変は特殊なAFOP様の気腔内線維化病変から進展する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
PPFE、UIP病変の早期線維化巣に発現の大きな違いのある病態関連因子のうちの1個のFBLNは病変を持つ実際のヒト症例の血清値を測定し、PPFE病変を持つ症例の方が高い状況がある事を見いだしていたが、PPFE症例の全例が高値ではなくバラツキがみられた。ラットの実験からは血清より血漿中のFBLN濃度が有意に高値として良く測定できるデータがある為、血漿中のFBLN値の測定を試みてはいるが、保存検体は、殆どが血清で有るためサンプル集積に支障を来している。そこで、肺病変のパラフィンブロックからもmRNA抽出して発現解析が可能であった為、PPFE症例3例とUIP症例3例、コントロール症例3例で解析したところPPFE症例に高い傾向がみられた。 しかしコロナ禍の影響により、サンプルの確保がなかなか困難であった為、予定の症例数の解析があまり進んでいない。またCOVID-19の対応により解析実行者の時間確保が難しくなるとともに、解析機械のメンテナンスも滞るなど解析環境に支障が生じ研究進行に大幅な遅れが生じている。その他は、有害事象発生はなく、倫理指針を遵守し研究を進められている。
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今後の研究の推進方策 |
アメリカ呼吸器学会、ヨーロッパ呼吸器学会に演題発表した特発性と2次性PPFE、UIPの病理学的に比較検討した結果、特に、いずれも進行性の難治性の肺線維化病変で早期線維化巣がみられるが、早期線維化巣・周囲の弾性線維の新生や消失の病態が違う点についての論文化が完結していない。パラフィンサンプルの方からFBLNなどの発現の違いのデータを整理してこれを急ぐ。 また、RAS提唱者である東大外科の佐藤雅昭らと共同でラットの移植モデルで肺移植後のBOとRASの新しい動物モデルを提案し、解析を行っている。免疫抑制下の同種移植片へのLPSの気道点滴注入は、免疫抑制の短縮された経過によって誘発されたRAS様のびまん性線維症とは異なるBO様の気道中心の炎症および線維症をもたらしていた。これら移植モデルは組織球やリンパ球の浸潤所見がある為、今後は、これら炎症細胞の遊走抑制し、その効果についての検討を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品費用などが予定より少なく済んだので、次年度の消耗品などに回す予定である。
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