研究課題
背景:世界において喘息患者は増え続けており、中でも重症喘息はしばしば急性増悪を来すことから患者QOLを低下させ、問題となっている。喘息を含む慢性呼吸器疾患の急性増悪を来す原因として、最も高頻度に認められるのは呼吸器感染症である。重症喘息の不可逆的な病態であるリモデリングの発生機序の一つに、上皮間葉転換(EMT)の存在が示唆されているが、EMTと呼吸器感染症に対する自然免疫応答との関係を検討した報告は見当たらない。目的と結果: そこで本研究は、気道上皮細胞がEMTを起こすことによる、自然免疫系生体防御反応に対する修飾作用とその成立機序を明らかにし、さらにその現象に対する既存の喘息治療薬を用いた介入効果を検証することを目的とする。方法:ヒト肺胞上皮細胞株(A549細胞)に、TGF-betaを作用させ、72時間培養することでEMTを誘導し、LPSを作用させるとIL-6、IL-8、GM-CSFの産生が増強した。その機序を調べるため、LPSの受容体発現レベルをrealtime PCRで解析したところ、EMT誘導によりA549細胞のSREC-1の発現が増強した。SREC-1のノックダウンにより、EMT誘導後A549細胞のIL-8、GM-CSFの産生増強作用は抑制された。考察:気道上皮細胞はEMTによりSREC-1発現増強を介してLPSに対するサイトカイン産生応答が亢進する可能性が示唆された。
1: 当初の計画以上に進展している
In vitroの実験が比較的順調に進んだため、論文として公表し得た。進捗は順調である。
現在までにTLRリガンドとしてLPS、CpGの効果を解明しているため、今後他のTLRリガンドに対する影響も明らかにし、サイトカイン産生のみならず、細胞増殖能や粘液、細胞外マトリックス産生能についても解析を進める予定である。
初年度はin vitroの実験を行い、必要試薬も多かったが、すでに研究室にある試薬を多く使うことができたため、使用額が予定を下回った。しかし、次年度以降は新たな試薬を購入する必要性も高いため、残金も含めて有効利用する予定である。
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Allergology International
巻: 66S ページ: 56-58