研究課題/領域番号 |
17K09634
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構東京病院(臨床研究部) |
研究代表者 |
大田 健 独立行政法人国立病院機構東京病院(臨床研究部), 臨床研究部, 名誉院長 (30160500)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 肺線維芽細胞 / IGF-1 / マクロファージ / 特発性肺線維症 / CpG |
研究実績の概要 |
背景: IGF-1はチロシンキナーゼレセプターを活性化し、線維芽細胞の増殖を促進することで特発性肺線維症(IPF)の慢性進行性の線維化に主体的に関与するため、IPFに対する治療標的となりうる。IPFにおいて線維芽細胞に作用するIGF-1の産生源であるマクロファージ特異的にIGF-1機能を阻害しうれば、治療応用の可能性が広がる。 目的:本研究の目的は、IPFにおいて肺胞マクロファージ特異的IGF-1の作用を明らかにし、IPFの治療応用の可能性を探求することである。 方法と結果:昨年度末梢血からのマクロファージ分化誘導の系を成立させたのに引き続き、末梢血由来マクロファージによるIGF-1の産生を亢進させるサイトカイン等刺激因子を検討したが、見出せなかった。そこで、U937(ヒトリンパ腫由来単芽球様細胞株)をPMAと共培養し、マクロファージに分化させた上で、様々な刺激を行ったところ、CpG刺激でIGF-1産生が亢進した。一方、末梢血由来マクロファージでは、CpG刺激によるIGF-1産生亢進は認められなかった。 U937由来マクロファージをCpGまたはcontrol ODNで24時間培養し、上清を回収した。その上清を肺線維芽細胞(NHLF)に加えて培養し、IL-6, IL-8, MCP-1の発現をrealtime PCRで解析した結果、CpGで刺激した培養上清を加えたNHLFにおいてのみ、 IL-6, IL-8, MCP-1のmRNA発現が亢進した。 考察:本研究から、U937由来マクロファージにおいてCpG刺激でIGF-1産生が亢進した。今後、抗IGF-1抗体を添加し、IGF-1を阻害することにより、その細胞機能亢進作用を抑制しうるか検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでに、当研究室では初めての試みある末梢血からのマクロファージ分化誘導の系を成立させた。ところが、末梢血由来マクロファージによるIGF-1の産生を亢進させるサイトカイン等刺激因子は予想が外れ、見出せなかった。一方、細胞株U937由来マクロファージによるIGF-1産生誘導因子を見いだすことができたため、来年度はU937由来マクロファージによるIGF-1が、肺線維芽細胞に及ぼす役割を明らかにし、IGF-1中和実験まで試みる。In vitroの系を確立するのに予想外の時間を要し、計画から多少遅れているものの、研究期間内に少なくともin vitroの実験系で、マクロファージ由来IGF-1の作用を明らかにはできるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、U937由来マクロファージによるIGF-1が、肺線維芽細胞に及ぼす役割を明らかにし、IGF-1中和実験まで試みる。また、in vitroの実験が予想通りの結果をもたらせば、シリカを用いたマウス肺線維症モデルに抗IGF-1抗体を投与し、線維化に対する影響を確認する予定としており、当該実験に対しては、倫理審査委員会による承認を得る方針としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
細胞株を用いた実験に必要な経費として、ほぼ計画通りに研究費を使用していたが、予想以上にデータ収集に時間を要したため、未使用分が生じた。 しかしながら、ようやくin vitroの系が確立できたため、今後は効率よく実験を組むことが可能であり、また次年度は実験動物を用いた、より費用のかかる実験を予定しており、これまで以上に試薬が必要になる可能性があると考えている。 したがって、残金も試薬代等として、次年度に用いる予定としている。
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