本研究では、非小細胞肺癌のPD-L1の遺伝子変異を解析し、腫瘍免疫病態への関与を明らかにするとともに、新たなバイオマーカーを探索した。 北海道大学病院の非小細胞肺癌手術検体154検体(ホルマリン固定パラフィン包埋材料)から薄切組織切片を作製し、PD-L1免疫組織化学染色を実施した。抗PD-L1抗体としてはクローンSP142を用いた。また、北海道大学病院病理部に設置されている自動染色器を使用した。1980年代から1994年の比較的古い非小細胞肺癌手術検体を用いた研究であるが、PD-L1発現を安定的に検出することができた。 また、同じく非小細胞肺癌手術検体154検体からDNAを抽出精製し、PCR法で遺伝子増幅の後、次世代シークエンサーを用いてPD-L1遺伝子変異解析を行った。検体は古いホルマリン固定パラフィン包埋材料であり、次世代シークエンス解析が難しく、繰り返してDNAの抽出と精製を要している検体もあるが、次世代シークエンス解析を実施できた。129検体においてPD-L1 3’UTR miRNA seeding領域の遺伝子変異(SNP、2か所)を検出することができ、PD-L1タンパク質発現との関係、腫瘍部と正常部の比較を解析した。SNP-Aが解析できた126検体において、腫瘍部と正常部のgenotypeが一致していたのは114検体(90.5%)、不一致だったのは12検体(9.5%)。SNP-Bが解析できた122検体において、腫瘍部と正常部のgenotypeが一致していたのは111検体(91.0%)、不一致だったのは11検体(9.0%)。PD-L1免疫染色陽性は64検体/129検体(50%)。SNP-Aにおいて、腫瘍部と正常部のgenotype一致群(52/114)に比し不一致群(10/12)はPD-L1免疫染色陽性率が有意に高かった(P = 0.01)。
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