研究課題
本研究では、癌幹細胞や薬剤耐性との関連が報告されたヒストンH3リジン4 (H3K4) の脱メチル化酵素JARID1a/bのヒストン修飾酵素の阻害によって、非小細胞肺癌細胞(NSCLC)における抗癌薬耐性化を克服することを目標とし、その基盤となる研究を行った。昨年度までの研究で、JARID1阻害薬PBITが、転写因子FRA1のプロモーター領域の活性化マーカーH3K4me3の脱メチル化を抑えることで、FRA1の発現の低下を抑えること、さらにFRA1の発現低下がEGFR-TKIで誘導される分泌シグナルネットワーク(セクレトーム)の変化を抑え、耐性細胞の増殖を抑制することを示した。本年度はセクレトーム中の増殖因子やサイトカイン濃度の変化を検討し、EGFR-TKIを曝露したEGFR-TKI感受性細胞株(PC9、H1975)の培養上清(conditioned medium; CM)中でIGF-1濃度が上昇していたが、PBITを前処置したEGFR-TKI感受性細胞株を用いた場合のCM中ではIGF-1濃度の上昇が抑制されることを明らかにした。PBITがEGFR-TKI耐性細胞の出現・増殖を抑えるか検討するため、96穴プレートを用いてEGFR-TKI感受性細胞グループを作り、EGFR-TKI±PBITを4週間曝露したところ、PBIT併用で耐性細胞の出現が抑制された。PBIT併用時のIGF-1シグナル経路の変化を検討したところ、下流シグナルの活性化がPBIT併用時に抑えられていることが分かった。また、ソフトアガロース法による検討で、PBIT単剤ではコロニー形成抑制効果を有さないことを確認した。以上より、JARID1阻害薬とEGFR阻害薬の併用は、NSCLCの抗癌薬耐性化を克服する新たな治療戦略となる可能性が示唆された。
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Cancer Chemother Pharmacol
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