112の肺腺癌切除検体を用いて、抗LGR6抗体を用いた免疫染色法によるタンパク発現解析を行い、LGR6発現の予後因子としての意義を調べた。単変量解析では、男性、進行病期、LGR6高発現が予後不良と有意に関連していた。さらに、多変量解析では、進行病期とLGR6高発現が予後不良と有意に関連していた。以上より、LGR6発現は、肺腺癌の独立した予後不良因子であることが明らかとなった。 20の小細胞肺癌(SCLC)切除検体、16の肺大細胞神経内分泌肺癌(LCNEC)切除検体を用いたLGR6タンパク発現解析を行った。その結果、SCLCの50%、LCNECの75%においてLGR6高発現が認められ、LGR6が肺神経内分泌腫瘍において高発現していることが明らかとなった。 LGR6過剰発現による肺癌の悪性形質獲得の分子制御機構を解明するため、CTNNB1変異を有するNSCLC細胞株HCC15を用いて、RNA干渉によるLGR6ノックダウンにより発現変動する遺伝子群をマイクロアレイにより解析した。その結果、MAPK-NFκB経路、オステオポンチン経路、TOLL様受容体経路などの炎症誘導や腫瘍微小環境の制御に関わる経路がLGR6により制御されていることが明らかとなった。また、LGR6関連遺伝子群には、癌幹細胞マーカー、腫瘍微小環境の制御に関わるサイトカイン、増殖因子などが含まれていた。以上より、WNT経路活性化によるLGR6過剰発現が、これらの遺伝子の発現制御を介して、肺癌の悪性形質の獲得に寄与することが示唆された。
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