研究課題
気管支喘息は気道におけるアレルギー性慢性炎症であり、その臨床的特徴の一つに粘液過剰分泌がある。この粘液の中には多くの糖タンパク質が含まれており、また気道上皮細胞上に発現する分子も複雑な糖鎖修飾を受けることが知られている。本研究はアレルギー性炎症により気道上皮細胞に引き起こされる糖鎖修飾の役割を明らかにすることを目的とした。昨年度までに、チリダニ誘発性アレルギー性気道炎症を惹起したマウス気道上皮細胞にフコシル化が誘導されること、気道上皮フコシル化はフコース転移酵素(Fut2)により介在されること、気道上皮Fut2はIL-13/Stat6経路により発現制御を受けること、さらに気道上皮フコシル化を生じないFut2欠損マウスではアレルギー性気道炎症が減弱することを明らかにしてきた。本年度は気道上皮フコシル化のアレルギー性気道炎症の制御機構を検討した。まず、チリダニ誘発性アレルギー性気道炎症を惹起したマウスから気道上皮細胞を単離しプロテオーム解析を行った。この研究によりFut2欠損マウスでは肺にける補体活性化が有意に減弱していることが示唆された。補体C3はレクチン経路により活性化されアナフィラトキシンとしてアレルギー性炎症の病態に関わるC3aを産生するが、Fut2欠損マウスではチリダニ誘発性アレルギー性気道炎症を惹起したマウス肺におけるC3a産生が有意に低下していた。C3aはC3a受容体を介してアレルギー性炎症を制御するが、これまでいかなる細胞がC3a受容体を発現しているかは不明であった。FACSにより肺浸潤細胞を解析した結果、単球由来樹状細胞が特異的にC3a受容体を発現していることが示された。以上の結果から気道上皮フコシル化は補体活性化を促進し、単球由来樹状細胞を活性化することによりアレルギー性気道炎症を制御すると考えられた。
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