研究課題
近年、終末糖化産物受容体(receptor for advanced glycation end-products, RAGE)の遺伝子多型がCOPD患者の呼吸機能と関連し、患者肺においてRAGEの発現が著明に増加していることが明らかになった。COPDの一因として、肺組織修復能の低下が考えられている。肺線維芽細胞は、細胞外マトリックスの産生等を介して組織修復を促進し、肺組織の恒常性維持に極めて重要な役割を果たす。COPDでは、肺線維芽細胞の機能が様々な原因により変容し、 組織修復能(遊走能)が低下していると推測されている。本研究ではRAGEシグナルの肺線維芽細胞修復メカニズムにおける生理機能の解析を行った。in vitroで、 primary human lung fibroblastであるHFL-1細胞を、複数のRAGEリガンド(アミロイドβ蛋白、 S100蛋白、HMGB-1等)の存在下で培養し、肺線維芽細胞修復能 を、細胞遊走能(ケモタキシスアッセイ)を用いて評価したところRAGEアゴニスト刺激により、時間用量依存性にHFL-1細胞の遊走が抑制された。各RAGEリガンドによる効果の違いも認めた。さらにS100A12による抑制効果はRAGE受容体の阻害により解除されたがTLR4阻害では解除されずRAGE特異的な効果と考えられた。RAGE下流シグナルにはp38 MAPK、NFκB経路が重要であり、p38、NFκB阻害剤を使用したところ、S100A12による遊走抑制作用はp38阻害剤で解除された。Western blotで、S100A12はp38のリン酸化を増強した。以上よりRAGEリガンドの内、S100A12はRAGE-p38経路を介して肺線維芽細胞の遊走能を抑制すると考えられた。COPDにおける肺線維芽機能遊走能の低下の一因にRAGEシグナルが関与する可能性が示唆された。
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In Vitro Cell Dev Biol Anim.
巻: 8 ページ: 656-664
10.1007/s11626-019-00384-x