研究課題
本研究では、最近本邦で承認されたOsimertinibを含む変異型選択的EGFR-TKIに対するアポトーシス抵抗性に着目し、末梢血を用いたBIM遺伝子多型及びEGFR-T790M測定に基づくEGFR変異陽性肺癌における新たな個別化治療開発を目的として、これまでに以下の成果をあげた。1) Zinc-finger nucleaseを用いてホモ接合型でBIM遺伝子多型を導入したPC-9 BIMi2-/-細胞をマウス皮下に移植し、OsimertinibとVorinostatの効果を検討したところ、各単剤の治療では腫瘍は縮小しなかったが、併用治療によって著明な縮小効果を認めた。また、マウスの体重減少等の毒性を認めず、in vivoにおける有効性とともに忍容性も確認された。2) PC-9 BIMi2-/-細胞をin vitroで第1世代EGFR-TKIであるGefitinibの耐性株を樹立し、EGFR T790M変異陽性であることが確認された。このPC-9 BIMi2-/- GR細胞も同様に、Osimertinibに対してアポトーシス抵抗性を示し、Vorinostatと併用することで顕著にアポトーシスが誘導された。3) Vorinostatの併用効果について、いずれのHDAC阻害活性が重要であるかを明らかにするためsiRNAを用いて検討したところ、HDAC3の発現抑制によりOsimertinibによるアポトーシス誘導性が回復したことから、HDAC3阻害が標的として重要であることが明らかになった。4) 検査企業との共同研究により、末梢血を用いたBIM遺伝子多型測定系を確立した。また、血漿中のcell free DNAを用いたEGFR T790Mの高感度検査法を構築することを目的に新たな共同研究に着手し、研究計画書案を作成した。
2: おおむね順調に進展している
研究計画で予定していた解析は、ほぼ当初予定通り進捗している。
Vorinostat以外のHDAC阻害薬の有効性について、HDAC3阻害活性を中心に探索する。患者末梢血を用いたEGFR-T790M変異測定系については、企業との共同研究として新たに研究計画を作成中であるが、Osimertinibが第3相臨床試験の結果により、EGFR変異陽性(T790M陰性)の非小細胞肺癌にも適応拡大される見込みであり、T790Mに限定しないEGFR変異全般について、cell free DNAを用いて高感度に検出できる測定系を構築するべく協議中である。
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