本研究では捕捉された循環腫瘍細胞塊と単一循環腫瘍細胞に関して、既知の耐性変異の解析を行う。さらにこれらの発現解析を行うことにより、循環腫瘍細胞塊でのアノイキス抵抗性や癌幹細胞性の表現型、上皮間葉形質転換に関わる遺伝子を探究する。さらに幹細胞を分離すると言われる細胞培養条件で培養することで、癌幹細胞性のある細胞を分離し、形質維持に関与する遺伝子の探索や薬剤感受性を検討する。これらの検討から循環腫瘍細胞中から分子標的薬の耐性機序を解析するとともに、耐性に寄与すると考えられる癌幹細胞性を克服するための新たな標的を同定し、新たな個別化医療の確立を目指すことを目的としている。本年度は以下の項目を行った。 1. 循環腫瘍細胞の耐性変異解析 全ゲノム増幅の技術を用いて、上皮成長因子受容体遺伝子変異耐性モデルであるH1975細胞株らのT790M遺伝子変異検出可能であったため、当院の倫理委員会の承認を得て、分子標的薬の耐性を獲得した患者から同意の上採血し循環腫瘍細胞の検出を行っている。複数の参加施設を募り、現在多施設共同研究として臨床試験を行い、17例の症例登録を得ている。同時にcell free DNAの解析を行い、一致性も検討している。 2. 癌幹細胞関連細胞の検出 血中を循環している癌幹細胞に関連した細胞の検出を試みている。同じ細胞フィルタを用いてモデル実験を行ったところ、健常人血液に目的細胞を混入させた実験では、同様のアッセイにてにて検出可能であることを確認した。本年度は、患者検体での検出を試みている。
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