研究課題
ヒト肺癌におけるMAPKシグナルによる免疫逃避機構をケモカイン産生抑制に焦点を当てて解析することが当初の計画であった。肺腺癌におけるEGFR遺伝子変異は、MAPKシグナルの活性化を誘導する。同変異は日本人肺腺癌の約50%に認められ、免疫チェックポイント阻害剤に対する耐性に関連するため、TCGAデータを解析したところ、EGFR変異肺癌では野生型より有意にCD8aのmRNAレベルが低く、CD8aの発現と相関する各種ケモカインのmRNAレベルも有意に低下していた。このことから、EGFRシグナルは肺癌細胞からのケモカイン産生抑制を誘導するという仮説を立て、その機構解析を行った。EGFR変異肺癌細胞株を用いてEGFR阻害剤処理により発現上昇する主要なケモカインとしてCXCL10を同定し、EGFRシグナルによるCXCL10発現抑制機構の詳細を解析した。EGFRシグナルはCXCL10 mRNAの不安定化には関与しなかったため、転写抑制を誘導すると考察した。しかし、CXCL10のプロモーター解析の結果、EGFRシグナルがプロモーター活性を抑制するという証拠は得られなかった。次に、エピジェネティックな転写抑制機構を探索した。CXCL10はCXCL9, 11と55kb内に遺伝子クラスターを形成し、EGFR阻害剤はこれらの遺伝子発現を共通に上昇させることから遠位個所に遺伝子発現を共通に制御する領域が無いかATAC-Seq解析で解析したところEGFR阻害剤でCXCL11遺伝子上流にopen chromatinのピークを認めた。この領域がtopologically associating domain (TAD)として3遺伝子の発現をエピジェネティックな機構により制御している可能性が考えられる。今後エピジェネティック阻害剤がケモカイン発現に与える影響を検証する予定である。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Journal of immunological methods
巻: 476 ページ: 112679-112679
10.1016/j.jim.2019.112679