研究実績の概要 |
特発性肺線維症患者の血清中のRAGEリガンドHMGB1は安定期においても健常者と比較して高値であり急性増悪期に著明に上昇していた。更に安定期のHMGB1は急性増悪の予測因子であり、急性増悪期のHMGB1値は予後の予測因子となることを示し、急性増悪のバイオマーカーとして有望であることを明らかとして論文発表を行った(Respirology, 2020, 25, 275-280.)。RAGEのsplicing variantであるesRAGEについての検討では、特発性肺線維症患者の血中esRAGEは健常者より低値であり、血中esRAGEと気管支肺胞洗浄液中のesRAGEは有意な正の相関を示し肺由来のesRAGEが循環血中esRAGEと関連していることが示唆された。気管支肺胞洗浄液中のesRAGEはDLCOと相関しており肺胞傷害との関連が示唆された。また血中、気管支肺胞洗浄液中のesRAGEともに低値であることが特発性肺線維症の予後不良因子となることが明らかとなり、esRAGEが本疾患の病態生理に関連しておりバイオマーカーとして有望であることが示され論文発表を行った(Respiratory Research, in press)。基礎実験ではブレオマイシン投与を行ったC57BL/6マウスのブレオマイシン肺傷害モデルではRAGEリガンドであるHMGB1、S100A4が上昇しておりRAGE/リガンド経路の活性化が示された。ブレオマイシン肺傷害モデルマウスにRAGE阻害薬を投与することにより肺の線維化の指標であるハイドロキシプロリンの減少を認め新規治療薬として有望であることが示唆された。RAGE阻害薬投与により肺の線維化に関与する間葉系細胞の減少を認めており、細胞レベルでのRAGEリガンドの作用の抑制効果について詳細な解析を進めている。
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