研究課題/領域番号 |
17K09657
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
後東 久嗣 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 准教授 (00437641)
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研究分担者 |
荻野 広和 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 助教 (20745294)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 血管新生 / 肺がん / 悪性胸膜中皮腫 / 薬剤耐性 / 線維細胞 |
研究実績の概要 |
血管新生阻害薬を用いた抗血管新生療法は、様々ながん種で効果を発揮する一方、他の分子標的治療薬と同様に耐性化現象が問題視されている。この原因として、血管新生阻害薬の耐性メカニズムの解明やバイオマーカーの同定が進んでいないことが考えられるが、最近我々は血管新生阻害薬耐性に関わる重要な細胞として線維細胞(fibrocyte)を同定した。本研究では、血管新生阻害薬耐性バイオマーカーとしての線維細胞の可能性を探るとともに、線維細胞を標的とした新たな治療法を開発することを目的とした。 平成30年度の目的として、1つ目としては平成29年度に引き続き、抗VEGF抗体投与患者において、投与前と耐性後の末梢血もしくは胸水中線維細胞数を測定することを掲げた。本検討課題については、現在14例のベバシズマブ耐性症例を解析している(6例が現在進行中)。現時点では、7例(50%)でベバシズマブ耐性後に末梢血中線維細胞数の増加が認められた。さらに症例を蓄積していく予定である。 これまでの検討で、抗VEGF抗体耐性にfibrocyteの産生するFGF2が重要であることを見出しているが、FGFR阻害薬を抗VEGF抗体に併用しても、マウスの生存期間は延長するも結局マウスは腫瘍死することが判明している。平成30年度の2つ目の検討課題として、この併用療法の耐性機序を解明することを掲げた。マウス腫瘍組織を検討した結果、併用療法に耐性化した腫瘍では、マウス由来のPDGFが増加していることが判明した。今後、腫瘍内PDGF産生とfibrocyteの関係を中心にさらに解析を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の目的の一つとして、マウスモデルにおいてベバシズマブを投与後、経時的に腫瘍組織を採取し、線維細胞の腫瘍内集積タイムコースを把握することを掲げた。悪性胸膜中皮腫細胞株を用いたマウスモデルにて線維細胞の腫瘍内での動態を詳細に解析したところ、抗VEGF抗体の投与中止後、線維細胞は3日で腫瘍内からほぼ消失する結果を得ている。現在、抗VEGF抗体投与に伴う線維細胞の腫瘍内集積のタイムコースを検討している。前述した臨床研究についてはさらに症例を集積する予定である。 平成30年度以降の目標としては、以下の2研究を掲げた。①線維細胞の遊走・分化に関わる因子を阻害する作用を有する化合物を用いて、血管新生阻害薬とこれらの線維細胞機能阻害薬の併用による抗腫瘍効果をマウスモデルを用いて検討する。②これまでの検討で、線維細胞の産生するFGF2をVEGFに加えて阻害することでさらに良好な抗血管新生効果を得ている。しかし、FGF2阻害薬を併用しても完全な耐性克服は得られていない。そこで、これらの併用療法を耐性獲得まで継続することで、さらにその後に起こる耐性メカニズムを明らかにする。上記①においては、化合物が入手困難(高額)であることが判明し、研究を継続することが難しい可能性がある。しかし、②についてはすでに研究に着手しており、VEGF阻害薬とFGF2阻害薬の併用療法に対しても耐性となった腫瘍を解析した結果、マウス由来のPDGFが重要であることが示唆されている。今後、免疫組織学的検討やマイクロアレイによる網羅的解析を行い、これらの併用療法に対する耐性メカニズム解析を進める予定である。 よって、現時点での総合評価として、おおむね順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究目標の一つである、線維細胞の腫瘍内集積タイムコースを解析する研究に関しては、現在、新たなマウスモデルを作成し、腫瘍内に線維細胞が集積するメカニズムを解析中である。これまでのヒト肺癌組織検体を用いた検討では、臨床的に効果ありと判断されている時期でも線維細胞は多く集積しており、臨床での効果判定と耐性メカニズムの発動にタイムラグがあることが示唆されている。血管新生阻害薬投与後の腫瘍内線維細胞の動態の詳細を明らかにすることで、「線維細胞の集積を最小限にしつつ、血管新生阻害効果を維持する投与間隔」を探索し、血管新生阻害薬の指摘レジメンを提案できる可能性があると考えている。 抗VEGF抗体投与患者において、投与前と耐性後の末梢血もしくは胸水中線維細胞数を測定する臨床研究については、すでに方法は確立しているため、症例集積を進め結果を蓄積していく。 これまでの我々の検討で、VEGF阻害薬耐性には線維細胞が産生するFGF2が重要であることが判明している。実際、VEGF阻害薬にFGFR阻害薬を併用することで良好な抗血管新生効果が得られている。しかし、これら併用療法においてもマウスはいずれ癌死することも判明している。これらの耐性に宿主細胞が産生するPDGFが重要であることがこれまでの検討結果から示唆されているため、今後の目標として、マウスモデルを用いて、これらの併用療法に対する耐性メカニズムとしての宿主由来PDGFの重要性を解析する。すでにマウス検体は採取されており、今後線維細胞を含めた耐性メカニズムの解析を進めるが、方法も確立されており、障壁は少ないと考えている。この研究を行うことで、今後臨床開発が進むであろう多分子を標的とした抗血管新生療法の耐性メカニズムを解明できる可能性があると考えている。
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