血管新生阻害薬を用いた抗血管新生療法は、様々ながん種で効果を発揮する一方、他の分子標的治療薬と同様に耐性化現象が問題視されている。この原因として、血管新生阻害薬の耐性メカニズムの解明やバイオマーカーの同定が進んでいないことが考えられるが、最近我々は血管新生阻害薬耐性に関わる重要な細胞として線維細胞(fibrocyte)を同定した。本研究では、血管新生阻害薬耐性バイオマーカーとしての線維細胞の可能性を探るとともに、線維細胞を標的とした新たな治療法を開発することを目的とした。 平成30年度以降の目標としては、以下の2研究を掲げた。①線維細胞の遊走・分化に関わる因子を阻害する作用を有する化合物を用いて、血管新生阻害薬とこれらの線維細胞機能阻害薬の併用による抗腫瘍効果をマウスモデルを用いて検討する。②これまでの検討で、線維細胞の産生するFGF2をVEGFに加えて阻害することでさらに良好な抗血管新生効果を得ている。しかし、FGF2阻害薬を併用しても完全な耐性克服は得られていない。そこで、これらの併用療法を耐性獲得まで継続することで、さらにその後に起こる耐性メカニズムを明らかにする。 上記①においては、化合物が入手困難(高額)であることが判明し、研究を継続することが困難であった。しかし、②については、腫瘍組織の遺伝子解析を行った結果、FGF2およびVEGF阻害に耐性化した腫瘍では、宿主由来の血小板由来成長因子A(PDGF-A)が増加していることが判明し、さらなる血管新生に寄与している可能性が示唆された。今後、血管新生阻害薬耐性克服に向けてVEGFおよびFGF2に加え、PDGF-Aを阻害する多分子標的治療の可能性に対する基礎的研究の推進が必要であると考えられた。
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