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2017 年度 実施状況報告書

アスパラギン残基の脱アミド化反応による慢性閉塞性肺疾患発症のメカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 17K09658
研究機関岩手医科大学

研究代表者

小笠原 正人  岩手医科大学, 歯学部, 教授 (00325367)

研究分担者 瀬戸口 靖弘  東京医科大学, 医学部, 准教授 (90206649)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードProhibitin 1 / 脱アミド化 / 加齢 / 慢性閉塞性肺疾患
研究実績の概要

慢性閉塞性肺疾患の発症の背景に加齢性因子が指摘され、非酵素的反応で進行するアスパラギン残基の脱アミド化したミトコンドリアの蛋白質であるProhibitin1(PHB1)に着目し、これまでの研究で酸化ストレスによるPHB1蛋白のアスパラギン酸残基異性体化の増加を明らかにした。PHB1蛋白の中でアスパラギン残基の脱アミド化が起こりやすいN24D,N226D変異を導入したA549細胞を用い電子顕微鏡及び蛍光免疫染色によるミトコンドリアの形態解析を行った。N24D変異を持つミトコンドリアのクリステ構造は不整な配列を呈し、また癒合型のミトコンドリアの有意な増加とPCR法にてミトコンドリアDNAコピー数の減少も認められた。さらに細胞増殖能を創傷治癒アッセイで評価し、分裂能の低下による創傷治癒の遅延が認められた。脂肪滴の評価はオイルレッドO染色で評価し、小型脂肪滴の数が減少する一方、大型脂肪滴の増加が認められ脂肪滴の癒合が促進していると考えられた。N226D変異を持つ細胞では創傷治癒アッセイはベクタ-のみ導入した細胞と有意差は認められなかった。脂肪滴の評価はN24D変異と同様、小型脂肪滴数の減少と、大型脂肪滴数の増加を示し、脂肪滴の癒合が促進した。ミトコンドリア形態はN24Dとは異なり、クリステ構造は維持されていた。しかしながら、蛍光免疫染色ではN24D変異と同様に癒合型のミトコンドリア構造を示すものが増加していた。またN24Dと異なり、PCR法によるミトコンドリアDNAは変化がなかった。以上、N24D変異はミトコンドリア形態、増殖能、脂肪滴形態の変化をもたらした。N24Dを含むペプチドを合成し、N24D変異を認識するモノクローナル抗体の作成を行った。ELIZA法、およびwestern blot 解析にて5クロ-ンのハイブリドーマを分離した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

PHB1蛋白質の変異体(N24DとN226D)を発現する安定細胞株を作成し、ミトコンドリアの微細形態、蛍光免疫染色による解析を行った。N24D変異ではミトコンドリアのクリステ構造の配列の不整が明らかになり、癒合型のミトコンドリア形態の増加が確認された。また、細胞増殖能に関しては創傷治癒アッセイで遅延が確認され、ミトコンドリアDNAのコピー数がコントロールの半分以下に低下していた。GFP癒合型蛋白を発現する安定細胞株をPHB1(WT)、PHB1(N24D)、PHB1(N226D)で作成することができた。詳細解析はコンフォーカル蛍光顕微鏡で行う。さらにPHB1(N24D)は脂肪滴の形成にも影響を与え、大きいサイズの脂肪滴の割合が増加し、脂肪滴の癒合が促進していた。PHB1(N24D)を特異的に認識するモノクローナル抗体を産生する5クローンのハイブリドーマを作成することができた。以上これまでの研究でPHB1(N24D)のミトコンドリアの形態の変化、ミトコンドリアDNAコピー数の低下、細胞増殖能の低下、脂肪滴の癒合促進を確認できた。

今後の研究の推進方策

N24D変異およびN226D変異の細胞内局在をEGFP癒合蛋白発現およびストレプトタグ付き蛋白の局在を蛍光免疫染色で解析する。また細胞を膜画分、細胞質画分、核画分に分け生化学的解析を行う。細胞増殖能、遊走能に関しては創傷治癒アッセイおよびboyden chamber assay法にて解析する。Strep(II)タグ付き蛋白をアフィニティーカラムにて回収し、細胞増殖と関連するE1蛋白質、Rb蛋白質との相互作用を検討する。N24D変異を発現する細胞は脂肪滴の形成―癒合に関わる過程に影響し、脂肪滴を制御する蛋白質の発現とN24D蛋白質との相互作用を解析する。さらにミトコンドリアの酸化的リン酸化(complex I~ complex V)に関係し、核にコードされている遺伝子の発現レベルの解析を行う。またミトコンドリアの数と生合成に関与するPGC1-alpha;,TFAMについて発現を検討する。PHB1のN24D変異に認識するモノクローナル抗体の作成が出来たので、免疫沈降が可能な抗体であるか、さらに免疫染色可能な抗体であるか検討する。本抗体はラットで作成されたのでヒト検体、および加齢マウスと加齢促進マウス(SAM)を用いた検討を行う。ヒト検体は肺がん症例及び慢性閉塞性肺疾患で肺がん合併症例の手術検体(肺組織)及び末梢血の単核球を用いる。さらに慢性閉塞性肺疾患の肺機能検査についてもデータを収集する。ヒト検体の研究は分担研究者瀬戸口(東京医科歯科大学特任教授)が倫理委員会承認後行う。加齢マウス及び加齢促進マウス(SAM)を用いた研究は研究代表者小笠原(岩手医科大学教授)が岩手医科大学実験動物委員会の承認を経て行う。6週齢、12週齢、18週齢、24週齢、50週齢のマウス肺組織、心筋組織、骨格筋組織、皮膚組織の免疫染色、組織抽出液の蛋白レベルでのN24D変異質的及び量的検討を行う。

次年度使用額が生じた理由

試薬及び抗体の購入が予定より安価に購入できた。また抗体作成に必要な試薬の購入が予定より安価であったため当該年度に残額が生じた。次年度の試薬代に含める予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2017

すべて 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] Deamidation of asparagine residues in Prohibitin 1 is involved in lipid droplet formation in alveolar epithelial cell line.2017

    • 著者名/発表者名
      Ogasawara M, Shudou M, Tanaka Y, Maeyama K, Yamauchi K,
    • 学会等名
      The International Conference of D-Amino Acid Research,July 2017, Varese, Italy.
    • 国際学会
  • [学会発表] 小胞体ストレスに対するProtein-L-isoaspartate(D-aspartate)O-methyltransferase代償発現の不足は肺腺癌浸潤を促す.2017

    • 著者名/発表者名
      山下雅大、斎藤平佐、小笠原正人、山内広平、前門戸任
    • 学会等名
      第76回日本癌学会学術大会 2017年9月(横浜)

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公開日: 2018-12-17  

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