研究課題/領域番号 |
17K09659
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
山本 和子 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (10398167)
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研究分担者 |
井手口 周平 長崎大学, 病院(医学系), 医員 (50796224)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 肺炎球菌肺炎 / 侵襲性肺炎球菌感染症 / 縦隔リンパ節 / 好中球 |
研究実績の概要 |
1. 肺炎マウスで縦隔リンパ節好中球の免疫における特異性を発見した。 C57BL/6 マウスに肺炎球菌血清型19Fを気管内投与し、15 時間後にMLN・血液・気管支肺胞洗浄液をそれぞれ 採取し、 FACS法を用いて好中球(CD45+Ly6G-1A8+細胞)を単離した。ア)発現するサイトカイン(CXCL10・CCL19・CCL21)を測定し、さらに受容体(CXCR3・CCR7)を測定した。いずれもMLN好中球に特異的な発現はみられなかった。イ)MHC class II の発現の有無 についてフローサイトメトリーで解析したところ、血液・肺の好中球には発現は認めなかった(<1%)が、MLN好中球にMHC class II の強い発現(22%)を認めた。以上のことから、MLN好中球の特異性が明らかとなり、現在研究を進めている。 2.本研究に関連して、以下の論文を報告した。 Smith NMS, Yamamoto K, Mizgerd JP, et al. Regionally compartmentalized resident memory T cells mediate naturally acquired protection against pneumococcal pneumonia. Mucosal Immun 11(1):220-235, 2018. 3.本研究に関連して、以下の発表を行った。 Yamamoto K. The impact of neutrophil recruitment in mediastinal lymph node to invasive pneumococcal pneumonia. 第58回 日本呼吸器学会学術講演会(大阪)呼吸器領域若手グローバル研究者シンポジウム 2018年4月27日
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上述したように、肺炎マウスで縦隔リンパ節好中球の免疫における特異性を発見し、研究を進めている。しかし、前述の特異性の実験に予想を上回る時間を要したため、当初平成29年度に行う計画であった縦隔リンパ節における好中球の局在の同定についてはサンプルは採取出来ているものの、免疫染色ならびに電子顕微鏡観察が未だ施行できておらず、「やや遅れている」とした。 本研究に関連した学術論文をインパクトの高い一流国際誌に掲載し、国内の学術講演会でのシンポジウムでも発表を行った。予定していたボストンでのミーティングについては、H30年3月にロサンゼルスで開催されたGordon Research Conference(学会発表に記載)で、ボストン大学のMizgerd教授とミーティング時間を取ることができたため、H29年度は計上しなかった。
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今後の研究の推進方策 |
1. 縦隔リンパ節(MLN)における好中球の局在を明らかにする。 肺炎球菌肺炎マウスモデルの感染15時間後にMLN、脾臓を採取し(非感染コントロールマウスからも同様に採取)、組織固定後に B220抗体(B細胞)、CD3抗体(T細胞)、CD169抗体(マクロファージ)、MPO抗体(好中球)を蛍光染色し、電子顕微鏡を用いて好中球のリンパ組織内の局在場所について調べる。 2. リンパ内皮細胞(LEC)に着目した MLN好中球の遊走メカニズムの解明 肺 LEC が好中球ケモカインを産生するか検証する:我々が報告した肺分離法(Yamamoto K et al. AJRCMB 2014)を用いて、C57BL/6マウス肺から LECを分離する。マウス肺のCD45-T1α+CD326-細胞群(LEC) は、LECの特異的マーカーであるprox-1, VEGFR-3が強陽性であり、血管内皮細胞(PECAM-1強陽性細胞)と分離できる。感染前 C57BL/6マウスと、肺炎球菌感染後15時間のマウスから、上記肺分離法によりLECを分離し、RT-PCRを用いてケモカイン(CXCL1, CXCL2, CXCL3, CXCL5, CXCL9, CXCL10, CXCL11)を測定し、肺LECがケモカインを産生するか検証する。 3. さらに平成31年度実験を予定しているノックアウトマウス作成の準備を行う。 2.で LECケモカインが MLN好中球の遊走に寄与すると証明できた場合、LEC由来のケモカインを特異的に欠失するマウスとしてLEC RelA欠失マウス(Prox1-Cre/Relaf/fマウス)を作成する。共同研究先であるボストン大学の所持する Rela-floxed マウスを用いて、Prox1-Cre/Relaf/fマウスを作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究遂行上、当初の研究計画調書・交付申請書に記載していた計画のうち、縦隔リンパ節好中球の特異性の実験に予想を上回る時間を要したため、縦隔リンパ節内の好中球の局在について免疫染色や電子顕微鏡を用いた実験を行えず、それらの研究費は次年度持ち越しとなる。また、平成30年度に予定しているマウス肺からのリンパ内皮細胞の分離およびノックアウトマウス作成に費用が嵩むことが研究開始後に判明したため、平成29年度に施行した縦隔リンパ節好中球の特異性を評価する実験についての費用は他の経費から捻出した。当初平成29年度に予定していた縦隔リンパ節内の好中球の局在について免疫染色や電子顕微鏡の評価、そして当初より見積もり金額の大きくなったマウス肺からのリンパ内皮細胞の単離に用いる酵素やフローサイトメトリー、およびノックマウス作成費用として平成30年度に研究費を使用する予定である。
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