研究実績の概要 |
肺線維症合併肺癌では非合併例と比較して予後が有意に悪く、手術症例でも同様である。また制御性T細胞(Treg)の腫瘍内浸潤が多い症例では予後が不良であることが知られている。肺線維症合併肺癌において予後因子の免疫学的機序の研究は進んでおらず、Tregの腫瘍浸潤が予後因子であるかどうかを検討した報告はない。 当院にて2012年1月~2016年12月までの5年間で手術療法を行った533症例から画像的/病理学的に肺線維症合併肺癌と診断された31症例を試験群として選定し、年齢・性別・病期・組織型をマッチさせた62症例を対照群とした。試験群、対照群の全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)を検討し、腫瘍に浸潤するFoxp3陽性TregおよびCD8陽性細胞傷害性T細胞を含む免疫細胞の検討を行った。肺線維症合併肺癌症例は非合併肺癌症例と比較し、OSおよびPFSが有意に不良であった。予後因子として、腫瘍浸潤Foxp3陽性Treg数の増加およびCD8陽性細胞傷害性T細胞/Foxp3陽性Treg比の低下が関連している事が明らかとなり、関連学会での発表、論文投稿予定である。 動物実験では、ブレオマイシン(BLM)誘導肺線維症マウスモデルに肺癌細胞株(Lewis Lung Carcinoma;LLC)を尾静脈から投与し、肺線維症合併肺癌モデルを作成し、線維症合併マウスでは、対照群に比して腫瘍が顕著に増加,増大する事を明らかにした。更に、腫瘍局所へのFoxp3陽性Tregの浸潤は肺線維化と腫瘍増大と強く関連している事を見出した。動物実験での成果は日本呼吸器学会学術集会で発表し、論文投稿準備中である。
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