研究課題
肺癌は癌死因第1位の予後不良の疾患である。肺癌克服のため、今まで多くの研究がなされ分子レベルでの病態が明らかになりつつある。2004年にはEGFR変異が、また2007年にはEML4-ALK融合遺伝子が同定された。これらEGFRやALKに対して分子標的治療薬が開発され肺癌患者の予後の改善に貢献してきた。しかし、肺癌患者の予後は依然として不良であり、さらなる治療法の開発、個別化医療の推進が求められている。現在も癌の基礎研究は盛んに行われているが、そこから得られた知見を“今治療中の肺癌患者”に還元することは困難であることが多い。つまり基礎研究から得られた知見が“十分に臨床現場に還元できていない”現状がある。本研究では、肺癌患者の臨床検体あるいは臨床情報を用いて基礎研究を行い、肺癌患者の治療方針に役立つ知見を還元し患者毎に臨床応用するためのシステムの構築を目指す。具体的には、希少な遺伝子変異を有する肺癌患者、分子標的治療薬に耐性を獲得した肺癌を有する患者に対するtranslational researchの基盤を構築する。希少な遺伝子変異を有する肺癌患者に対しては、LC-SCRUM-Japanとの共同研究によりその頻度及び分布を把握するとともに、各遺伝子変異に対する薬剤感受性を評価して、希少な遺伝子変異を有する肺癌患者にとってどの薬剤が有効でありうるのかに関わるデータの蓄積を行っている。また、薬剤耐性化に関する研究では、分子標的治療薬に対して耐性を獲得した肺癌検体をもとに細胞株の樹立などを行っており、様々な分子機序の解明を進めている。
2: おおむね順調に進展している
本研究で得られた基礎的知見を臨床に活用するための研究を順調に行っている。LC-SCRUM-Japanとの共同研究では、稀なEGFR遺伝子変異を有する肺癌患者を100例以上で認め、その分布と頻度を明らかにした。今後、本研究内容は論文化する予定である。耐性機序の解明に関しては、薬剤に耐性化を獲得した肺癌検体から複数の肺癌細胞株を樹立しており今後の研究を進めるうえでの重要なツールを取得できた。
今後もLC-SCRUM-Japanとの共同研究を積極的に進め、EGFR遺伝子以外の遺伝子にも注目しその頻度と分布および薬剤感受性を明らかにする予定である。耐性機序の解明に関しては作成した肺癌細胞株を用いてin vitroの解析を行い、複数の耐性機序を明らかにする予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件)
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