研究課題/領域番号 |
17K09668
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
佐藤 匡 順天堂大学, 医学部, 准教授 (10596993)
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研究分担者 |
瀬山 邦明 順天堂大学, 医学部, 先任准教授 (10226681)
高橋 史行 順天堂大学, 医学部, 准教授 (70327823)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 慢性閉塞性肺疾患(COPD) / 気道上皮細胞 / 小気道上皮細胞 / タバコ煙抽出液 / PTGS2 (COX-2) / エクソソーム / microRNA |
研究実績の概要 |
すべての喫煙者の呼吸細気管支レベルで炎症が観察され、COPDにおいては末梢気道炎症を契機として、炎症が慢性化するとともに病変が中枢気道あるいは肺胞へ進展すると考えられている。そこで、末梢および中枢気道におけるタバコ煙曝露に対する反応性の違いを詳細に検討する目的で、ヒト小気道上皮細胞 (SAEC)、ヒト気管支上皮細胞 (NHBE)それぞれにタバコ煙抽出液 (CSE)刺激を行った。24時間曝露後の各気道上皮細胞からRNAを抽出し、マイクロアレイ法を用いた細胞内遺伝子発現解析、さらに、pathway analysis用いた遺伝子機能解析を行った。CSE曝露により2倍以上の発現変動がみられた遺伝子を抽出した。その結果、どちらか一方でも発現亢進が確認されたのは155遺伝子であり、そのうち44遺伝子が共通で亢進、39遺伝子がNHBEのみで亢進、72遺伝子がSAECのみで亢進していた。一方、どちらかで発現減少が確認されたのは149遺伝子であり、23遺伝子が共通で減少、71遺伝子がNHBEのみで減少、55遺伝子がSAECのみで減少していた。Pathway analysisの結果、SAECにおいて多くのpathway変動があり、TNF signaling pathwayやNF-kappa B signaling pathwayといった炎症関連のpathwayがNHBEと比較して有意に亢進していることが分かった。一方、発現が減少する遺伝子については有意なpathwayが検出されなかった。さらに、SAECで亢進するpathwayおよびtermに含まれる遺伝子としてPTGS2 (COX-2)が抽出され、これが、CSE曝露により、NHBEと比較してより早期から有意に発現亢進することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの実験結果より、気道上皮細胞と小気道上皮細胞のタバコ煙抽出液に対する反応性の違いが明確となった。さらに、予備検討として、それぞれの細胞上清から、本研究のメインターゲットである分泌型エクソソームの抽出法(超遠心法)を確立することができているため、今後反応性の違いをエクソソームレベルで詳細に解析していくことが可能となっている。In vivoでも、マウスの気管支洗浄液からエクソソームを抽出することに成功した。タバコ煙抽出液作成装置については、製造元である柴田科学との連携により、定期的なメンテナンスを実施することができ、実験が計画的に進捗することができた。以上の理由から本研究は概ね順調に進展していると考えた。
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今後の研究の推進方策 |
近年、呼吸器系細胞間においてmiRのエクソソームを介した情報伝達機能が明らかとなりつつあることから、エクソソームはmiRの生理的な供給システムとしても重要であり、かつエクソソームに内包されるmiRは病態形成あるいは抑制といった目的を有する機能性miRである可能性が高いと考えられる。異なるレベルの気道上皮細胞から分泌されるエクソソームを詳細に解析することで、それら細胞間でのクロストークや小気道上皮を端緒とすると考えられるCOPD病態形成機構の解明を目指す。さらに、in vivoでは、COPDモデルマウスへの、エクソソームを介したmiR投与実験系を確立することを目指し、将来的なエクソソームによるCOPD治療実験につなげていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度においては、他の原資にて、実験消耗品および人件費等の支出をまかなうことができたため。次年度においては、実験助手雇用のための人件費および実験消耗品費、2018年4月に大阪で予定されている日本呼吸器学会学術講演会の旅費、参加費等への使用を予定している。
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