研究課題/領域番号 |
17K09670
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
加藤 元康 順天堂大学, 医学部, 助教 (70750313)
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研究分担者 |
高橋 史行 順天堂大学, 医学部, 准教授 (70327823)
高橋 和久 順天堂大学, 医学部, 教授 (80245711)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 薬剤性肺障害 / 急性肺障害 / 肺胞上皮細胞 |
研究実績の概要 |
薬剤性肺障害は重要な疾患であり、急性に生じる肺障害の発症機序に肺胞上皮細胞における上皮間葉転換(Epithelial Mesenchymal Transition; EMT)が関与する報告があり、EMTを抑制ないし、弱体化する薬剤を予防的に投与することは薬剤性肺障害の発症や重篤化の予防に有効である可能性がある。 本研究では、予め選定された候補薬剤のEMT抑制効果を薬理学的に解析し、代表的な薬剤性肺障害モデルであるブレオマイシン(BLM)投与マウスに薬剤を投与することでIn vivo におけるEMTおよび肺障害抑制効果を検証する。 現時点までに、数種類の薬剤についてEMT抑制、弱体化効果を確認している。その分子生物学的機序についても検討を行っており、詳細な経路抑制機序の検討を行っているものもある。引き続き、肺障害抑制のメカニズムに関しては薬剤ごとで検討していく。 また、肺損傷については上記の通りBLMを用いたマウスモデルでの検証も行っている。実験系についてはさらなる検討中であるが、BLMの投与方法については、元来の肺線維化モデルでは経気管投与が主流であるのに対し、本件ではより実際の薬剤投与に模すため、経静脈経路での実験系を確立した。BLMを投与した後にどの程度での時期での候補薬剤が妥当か、などの薬剤投与方法を再検討しているところである。 また、BLMマウスモデルについてはその組織標本における免疫学的評価のさらなる検討を行っている。また、薬剤の炎症抑制効果について、リンパ球や好中球などの血球の影響も考慮し気管支肺胞洗浄液での評価もあわせて行っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年に引き続きIn vitro、In vivo両評価系についての検討を行っているが、特にIn vivoモデルは評価系の構築に難渋している。薬剤性肺障害を模するために使用するブレオマイシン(BLM)の投与方法や投与量について複数回の確認を行った上、更に、評価で用いる薬剤をどのタイミングで投与するかにより、予防なのか、発症後の治療なのか、陳勝的な意義も異なるため、現時点では双方の方法で評価を行うこととしている。そのため、一薬剤につき二方法での投薬方法を試みる必要があるため、時間と手間がかかっている。 更に、元来小生は病棟業務が主体であり、一定期間は研究業務主体となるが、本年はその限られた期間に、2020年に入ってからの新型コロナウィルス蔓延があるため、研究業務が特に進まなくなっている実情もあり、予定よりも遅くなっている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、薬効を確認する動物モデルでの薬剤性肺障害のモデルを構築するに至っているが、さらに、薬剤性肺障害の予防か、発症後の治療かに応じた投与系の確立を行っていく。 また、その予防・治療のメカニズムを確認することも重要であると考えており、病理標本の免疫組織染色やマウス血清、気管支肺胞洗浄液を用いた解析を行っていきたい。免疫染色では、引き続きリンパ球や好中球などに特徴的な抗体で染色を行うことで肺障害への効果を検討し、さらに併せて上皮系、間葉系細胞の染色を行うことでEMTへの評価を行えると検討していく。また、気管支肺胞洗浄液から得られた細胞成分の解析も行う。 並行して、行きつかの薬剤はin vitroでの分子生物学的な薬剤効果の検討を行っていることと並行して、BLMや他の薬剤を用いたin vivoモデルを持ちいて関与する経路やシグナル伝達について明らかにする。 これらの検討は、現在検討している薬剤性肺障害への効果を検討するには適しているが、類似病態である間質性肺炎の急性増悪や急性呼吸窮迫症候群への応用も視野に入れている。薬剤性肺障害に対する予防ないし発症後抑制効果のある薬剤の発見は、より重篤な特発性肺線維症の急性増悪にも対応できる可能性があると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度までに研究がやや研究遂行に遅れがあるため終了していない。これはとくにマウスを用いたin vivoの実験に時間を要しているからである。適正なモデルの構築や実験系を何パターンかで試しているため、モデル、実験系の確立に時間を要している。 本年度も主にはIn vivo実験、とくにマウスの購入への予算の使用になる予定である。
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