研究課題/領域番号 |
17K09673
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
皆川 俊介 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (70468685)
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研究分担者 |
荒屋 潤 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (90468679)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 細胞死 / フェロトーシス / オートファジー / フェリチノファジー / COPD |
研究実績の概要 |
COPD病態では、Programmed cell death(PCD) の亢進が病態進展上重要と考えられている。近年、リン脂質酸化を伴う鉄依存性、カスパーゼ非依存性のPCDであるフェロトーシスが報告された。我々は、COPD肺に鉄の過剰な蓄積が起こっていることに着目し、フェロトーシスが喫煙によって誘導され、COPD病態に関与するかを検討した。酸化されたリン脂質をグルタチオン依存性に直接還元する酵素であるGPx4はフェロトーシスの主要な制御因子として報告されているが、我々はこのGPx4過剰発現マウスおよびヘテロノックアウトマウスを用いて喫煙暴露実験を行なった。GPx4過剰発現マウスでは、喫煙暴露によって生じる細胞死や脂質過酸化を有意に抑制すると同時に、肺気腫を含めたCOPD病態形成を抑制した。またヘテロノックアウトマウスでは、細胞死や脂質過酸化の悪化とCOPDフェノタイプの悪化を認めた。 COPD患者肺組織や喫煙暴露動物モデルでは、気道における細胞内への鉄蓄積の亢進が確認された。有害な遊離鉄の蓄積を防ぐために鉄はフェリチンとして貯蔵されているが、近年、オートファジーを介してフェリチンを遊離鉄に分解する作用が明らかにされた。フェリチンがNCOA4という積み荷受容体を介して特異的に分解されるオートファジーはフェリチノファジーと名付けられ、細胞内遊離鉄産生からフェロトーシスを誘導することも明らかとなっている。今回In vitroでは肺上皮細胞にNCOA4siRNAによってノックアウトし、In vivoでもNCOA4siRNAの経気道投与実験を行なって、フェリチノファジーがCOPDにおける遊離鉄過剰の機序に関わっている可能性を証明した。フェリチノファジーが遊離鉄過剰やそれに引き続く脂質過酸化に関与し、フェロトーシスを誘導することでCOPD病態に関与する可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究予定では,COPDにおけるフェロトーシスの役割の解明であったが、そこにとどまらず、さらなる機序の解明として、フェリチノファジーがCOPDにおける遊離鉄過剰の機序に関わっている可能性を証明した。
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今後の研究の推進方策 |
より臨床治療的な見地から、喫煙暴露マウスへの鉄キレート剤やFerrostatin-1の投与実験、NCOA4siRNAなどの長期吸入実験を行い、最終的にフェロトーシス、フェリチノファジーを標的としたCOPD治療応用について検討していく予定である。
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