研究課題
末梢血リンパ球を用いて、iPS細胞を作出する内容は多数報告されている。しかし、末梢血T細胞は、胸腺から末梢血に流出した段階で、ナイーブT細胞ではなく、特定の機能や抗原反応性にのみ特化したT細胞(TCR遺伝子が組み換え・再構成された細胞)となっていることから、末梢血T細胞からiPS細胞を作出して、その後さまざまな機能な抗原に反応性を獲得する前段階のナイーブT細胞を作製することは非常に難しい。これまでの我々の研究において、独自の方法で市販のiPSベクターを用いて末梢血単球からiPS細胞を作製することに成功し、論文報告した(Cell Reprogram 20(6), 347-355, 2018)。2019年度の研究成果として、この新しい手法で作成した単球由来iPS細胞を用いて、免疫の司令塔であり、免疫をアクセル的に駆動させる樹状細胞やリンパ球への分化誘導およびアレルギーの細胞療法としての可能性を見出す、免疫のブレーキ的な役割をはたす免疫制御性細胞への検討を試みた。単球由来iPS細胞からマトリゲル上で分化誘導することで、単球(エステラーゼ染色陽性、貪食能あり、CD45+、CD14+、CXCR1+)、樹状細胞様細胞(CD209+、CD83+)に分化した。一方、フィーダー細胞を用いずに比較的短期間でリンパ球(CD4+)に分化誘導する新たな分化誘導法も確立した。樹状細胞様細胞にアレルゲンとなる抗原をばく露したところ、抗原提示に関与するHLA-DRの発現が増強することも明らかとなった。これら一連の結果は論文で報告した(Med Mol Morphol 2020, Online ahead of print)。制御性細胞への分化誘導において、一部、泡沫状マクロファージ様の細胞も混在しているのが現状であり、分化誘導の方法は更なる検討が必要である。
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CHEST
巻: Online ahead of print ページ: .
10.1016/j.chest.2020.02.025
Med Mol Morphol.
10.1007/s00795-019-00231-8
10.1007/s00795-019-00234-5
https://pure.fujita-hu.ac.jp/ja/publications/