移植腎の虚血再灌流障害、免疫学的拒絶反応および糸球体腎炎の病態では、腎臓の慢性炎症の持続には、炎症細胞から腎固有細胞への一方的なシグナルのみならず、双方向に作用するメカニズムが存在して、長期に持続する悪循環サイクルの存在が示唆される。この連関にヒストンのエピジェネティック修飾が共通する引き金として作用する可能性がある。高脂肪食を与えたマウスモデルではポドサイト障害においてインフラマソーム活性化が関連する報告や、加齢に伴い増加するアミロイド線維はファゴソームを介してNLRP3インフラマソームを活性化する報告を認める。マウスにおいてNLRP3阻害薬により結晶誘発性の腎繊維化を抑制することが報告されている。インフラマソームの果たす役割はIL-1βとIL-18の分泌を介した炎症誘導反応だけではなく、細胞死やオートファジーの誘導にも関わっていると考えられる。糸球体上皮細胞および尿細管上皮細胞と単球との間のNLRP3インフラマソーム遺伝子発現へのヒストン修飾を介した炎症の悪循環の病態解明を目的とする。単球と腎上皮細胞間のインフラマソームを介した相互連関においてヒストン修飾の重要性を解明することで、腎炎治療のターゲットを同定し創薬に貢献すると考え、本研究を進めている。①単球におけるH3K4 me3のインフラソーム活性に対する作用のIn vitroでの検討、②ポドサイトおよび尿細管細胞におけるH3K4 me3のインフラマソーム活性に対する作用のIn vitroでの検討、③単球とポドサイトまたは尿細管細胞の共培養条件におけるH3K4 me3のインフラソーム活性に対する作用のIn vitroでの検討、④虚血・再灌流モデルを用いたH3K4 me3とインフラマソームの関連のIn vivoでの検討、⑤腎炎におけるH3K4 me3とインフラマソームの関連の検討をした。
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